魔女の夜宴 (ラサロ・ガルディアーノ美術館)

魔女の夜宴（El aquelarre）

フランシスコ・デ・ゴヤによる《魔女の夜宴》は、1789年に制作された作品で、スペインのロマン主義絵画を代表する一品です。これは、魔女と魔術に関連する連作《魔女のテーマ》の一部であり、特に社会や宗教、迷信に対する批判が込められています。この作品は、20世紀に入ってから美術収集家ホセ・ラサロ・ガルディアーノによって購入され、死後にスペイン政府へ遺贈されました。現在はマドリードのラサロ・ガルディアーノ美術館に所蔵されており、プラド美術館にも連作の他の作品が展示されています。

制作背景

《魔女の夜宴》を含む《魔女のテーマ》は、オスーナ公爵夫妻からの依頼により制作されたのか、それとも完成後すぐに購入されたのかは謎です。オスーナ公爵家は1785年から1799年の間、ゴヤの大きな後援者であり、作品はマドリード郊外のエル・カプリーチョ邸で公爵夫人の書斎を飾るために使用されました。公爵夫人は教会の腐敗や社会の迷信を鋭く批判しており、彼女の家はしばしば魔女や悪魔に関する議論がなされる集会の場となっていました。

連作には、他に『魔女たちの飛翔』や『魔法をかけられた男』なども含まれ、当時の迷信や社会問題を反映しています。これらの作品は、魔女と悪魔の物語が一般の信仰として普及していた時代を背景に描かれています。

作品内容

作品は月夜の下、若い魔女と年老いた魔女に囲まれた悪魔の姿を描いています。この悪魔は山羊の頭を持ち、大きな角を持つ姿勢で、バッカスを連想させる葡萄の冠を被っています。前景には、飢えた老婆が生きた子供を抱えており、奥にいる若い魔女は元気な新生児を渡そうとしています。この場面における悪魔の振る舞いは、幼児が不幸な運命を辿ることを暗示しています。

子供の儀式において悪魔が僧侶のような役割を果たす描写は、当時広く信じられていた妄想を反映しています。作品の左側には、既に死んでいる子供の姿が地面に横たわっており、中央付近では若い魔女が他の子供を押さえつけています。また、背景にはさらなる魔女たちが描かれ、3人の幼児の死体が棒に吊るされています。

この絵は、ゴヤが魔女たちを通じて描く一般的なテーマであり、当時の迷信や人々の無知への痛烈な批判が感じられます。

解釈

ゴヤは魔女に関するテーマを多くの作品で用いており、《黒い絵》の一つとして知られる《魔女の夜宴、あるいは偉大なる牡山羊》が特に有名です。これらの作品は、17世紀の魔女狩りと教会の忌まわしい慣習に対する抗議の表現として位置付けられています。1798年には自由主義者と保守派の間での激しい対立を背景に、この作品が生まれたとも言われています。

これらの作品は、当時の社会に蔓延していた迷信に対するゴヤの軽蔑を明確に示しています。彼は教会が中世の恐怖を政治的利益のために利用している状況を批判し、民衆の無知が如何に利用されるかを描き出しました。

来歴

完成した作品は1798年にオスーナ公爵により購入され、以降様々な場所で展示されました。19世紀半ばにはオスーナ伯爵家の図書館に所蔵され、1896年の公売に出品された後、初代トヴァール公爵の手を経て、後にホセ・ラザロ・ガルディアーノが取得しました。

《魔女の夜宴》は、ただの美術作品に留まらず、当時の社会における迷信や恐怖、さらには政治に対する鋭い視点を提供するものとして、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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