魔女の隠れ家

魔女の隠れ家

ジョン・ディクスン・カーが1933年に発表した長編推理小説『魔女の隠れ家』は、ギデオン・フェル博士が初めて登場する作品として知られています。

あらすじ

物語の舞台は、イギリスのリンカンシャー州チャターハムという田舎町。「水松荘」と呼ばれる屋敷に住む辞書編纂家ギデオン・フェル博士を、アメリカ人青年のタッド・ランポールが訪ねるところから始まります。

そこでタッドは、地元に伝わる不気味な伝説を耳にします。それは、「魔女の隠れ家」と呼ばれる絞首台の近くに建てられたチャターハム監獄にまつわるものでした。代々監獄の長官を務めてきたスタバース家の長男は、必ず首の骨を折って不審な死を遂げるというのです。

現在の当主マーティンは、家督を継ぐための儀式として、25歳の誕生日の夜にたった一人で監獄の長官室で過ごすことになります。その証拠として、金庫に保管されている書類を持ち帰らなければなりません。フェル博士とタッド、そして村の牧師ソーンダーズは、万が一に備えて監獄を見守ります。しかし、深夜12時を前に長官室の灯が消え、異変を察知した彼らが駆けつけると、マーティンは「魔女の隠れ家」近くの崖下で首を折って死んでいるのを発見されます。さらに、長官室の金庫から書類が消え失せていました。フェル博士は、この奇妙な密室殺人の謎に挑むことになります。

登場人物

タッド・ランポール: アメリカ人青年。大学を卒業したばかりで、フェル博士を訪ねて事件に巻き込まれます。
マーティン・スタバース: スタバース家の当主となる青年。神経質な性格で、酒やタバコに溺れています。
ドロシー・スタバース: マーティンの妹。兄の代わりに屋敷を管理しています。
ハーバート・スタバース: マーティン兄妹のいとこ。ドロシーと共に屋敷を管理し、マーティンの才能を尊敬しています。
ティモシー・スタバース: マーティン兄妹の父。事故で亡くなっています。
ペイン弁護士: スタバース家の顧問弁護士。
テオドシア・ペイン: ペイン弁護士の妻。占い師です。
マークリー: チャターハムの医者。
トーマス・ソーンダーズ: チャターハムの牧師。スタバース家と親交があります。
バッジ: スタバース家の執事。
バンドル夫人: スタバース家の家政婦。
ギデオン・フェル博士: 辞書編纂家であり、探偵。チャターハムの「水松荘」に住んでいます。
フェル夫人: フェル博士の妻。そそっかしい性格で騒動を起こすことがあります。
ベンジャミン・アーノルド卿: 警察長。

提示される謎

アリバイ崩し（一部の時計が進んでいた理由）
暗号（宝の隠し場所）
スリーピング・マーダー（先代当主の死の真相）

補足

本作でフェル博士は、架空の村チャターハムの「水松荘」に住んでいます。
タッド・ランポールは、後の作品『帽子収集狂事件』や『三つの棺』にも登場します。また、ドロシー・スタバースはタッドの妻として『三つの棺』に登場します。
作中でフェル博士は、英国警察の高官ウイリアム・ロシター卿と親しいことが語られます。彼は『毒のたわむれ』に登場する探偵パット・ロシターの父親であり、フェル博士のシリーズが同一世界観であることが示唆されています。

もう一度検索