鮑のし

鮑のしについて

『鮑のし』は日本の古典落語の演目で、元々は上方落語に属します。この落語のストーリーは、主人公が祝儀にアワビを持参したことで展開される騒动を描いたものです。演目名には『鮑貝』や『祝いのし』という別名もあります。

概要

物語の中心となるのは、甚兵衛という男性です。彼はおめでたい性格で、いつも何かしらの幸運を期待している男ですが、実際には仕事を放棄して遊んでばかりいます。この日も「お城の堀に乙姫様が現れる」という噂に乗せられ、暇を持て余していました。その結果、彼はお金がなく、食事を取ることもできない状態に陥ります。

甚兵衛は妻に食べ物を頼むと、妻からある提案を受けます。「佐々木さんちで五十銭借りてきな」と言われ、以前断られたことを思い出しつつも、妻の伝え方でお金を借りることに成功します。実は彼の妻はお金をきちんと返す信用があるため、甚兵衛だけは信用が薄かったのです。こうして彼は、大家さんの息子が嫁を迎えるお祝いにアワビを持参するように指示されます。

ところが、甚兵衛が魚屋に行くと、鯛は高くて買えません。仕方なくアワビ三杯を購入して家に戻ると、妻はもったいぶりつつ、彼にお祝いの言葉を教え込みます。「大家さんに『おめでとうございます』と言って、つなぎ（長屋全体からの祝い）として渡せ」と instructs され、甚兵衛は不安を抱えつつも出発します。

騒動の展開

大家のもとに着いた甚兵衛は、予想通りの光景に直面します。彼は「一円くれ！」といきなり叫び、口上も言い間違えながら何とか話を進めます。しかし、大家はアワビを受け取ろうとせず、その理由を語ります。「アワビは縁起が悪いとされている貝で、あなたの息子を別れさせたいのか？」と怒りを露わにします。甚兵衛は途方に暮れ、アワビを投げつけられ、追い出されてしまいます。

その途中、彼は親分と出会います。親分からは「祝い物には『のし』というものが付いている、アワビがその原料だ」とのアドバイスを受け、甚兵衛は次の行動に出ることになります。彼は意気込みを持って大家の元へ戻り、土足で座敷に上がり込みます。「おしりをまくりたいところだが、今日はできない。アワビの由来を教えてやる！」と頑張ります。そして、大家の質問にも機転を利かせて答えるのです。

最後のサゲ

甚兵衛は「このアワビはおめでたいもので、長年の歴史のように語ることができる」と訴えます。大家がさらに質問すると、甚兵衛は首尾よくその質問にも答えていきます。本来のサゲは、甚兵衛が言い間違えたところから生じた笑いで、彼の度胸や機転を示します。このようにして『鮑のし』は、軽妙なやり取りと教訓を持つ落語として親しまれています。

結論

『鮑のし』は、ユーモアと風刺を交えた話であり、家庭や人間関係の複雑さを軽快に表現しています。観客を笑わせつつ、教えも含んだこの演目は、古典落語の中でも特に名高い作品となっています。

もう一度検索