鳥井博郎

鳥井博郎（1911年2月25日 - 1953年11月20日）は、昭和期の日本の思想史家であり、唯物論の立場から日本思想史研究に貢献しました。

生涯

兵庫県神戸市に生まれ、1934年に東京帝国大学文学部哲学科を卒業。在学中の1933年には唯物論研究会に参加し、早くからその思想的関心を示しました。卒業後、恩師である三枝博音の編集事業に協力し、「日本哲学全書」「日本科学古典全書」の編纂に携わります。しかし、1930年代の社会情勢の中、治安維持法違反で検挙され、拘留中に応召。病気のため除隊となります。

戦後は鎌倉アカデミア教授として教鞭をとり、唯物論の視点から日本宗教史、明治思想史などの研究に力を注ぎました。しかし、41歳という若さでこの世を去り、思想史研究における今後の活躍が期待される中、早すぎる死を迎えました。

業績

鳥井博郎は、短い生涯の中で、明治思想史研究において重要な足跡を残しました。特に、唯物論の立場から日本の思想を捉え直そうとする試みは、当時の思想界に大きな影響を与えました。

著書としては、

『明治思想史 唯物論全書』（1935年）
『ディドロ フランス啓蒙思想への一研究』（1948年）
『明治思想史』（1953年）

などがあります。これらの著作を通して、彼は明治期の思想潮流を唯物論的な視点から分析し、日本の近代化における思想の役割を考察しました。

また、三枝博音との共著として、

『日本宗教思想史』（1938年）
『日本の産業につくした人々』（1954年）

があります。

翻訳にも力を入れており、ヘーゲル、ヘフディング、ジョン・ロックなど、西洋の思想家の著作を翻訳し、日本の思想界に紹介しました。

ヘーゲル『宗教哲学 上巻』共訳（1933年）
ヘフディング『哲学者としてのキエルケゴール』（1935年）
ジョン・ロック『デモクラシイの本質』（1948年）
* U.ヴェント『技術と文化』三枝博音共訳（1953年）

鳥井博郎の研究は、戦後の日本における思想史研究の発展に大きく貢献しました。彼の著作は、今日でも明治思想史研究における重要な文献として参照されています。特に、唯物論の立場から日本思想史を捉え直そうとする視点は、現代の思想研究においても重要な示唆を与えています。

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