鳥居徹也

鳥居 徹也

鳥居 徹也（1965年10月20日 - ）は、東京都墨田区出身の教育関係者です。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、学校法人三橋学園が運営する「夏見台幼稚園・保育園」の園主を務めています。

活動と経歴

鳥居氏は、1995年に勤務していた企業を退職し、親族が経営する学校法人三橋学園内の「船橋情報ビジネス専門学校」へ移り、企画広報室長に就任しました。同年から、高等学校の生徒たちを対象に、「働くことの意義」について啓発する講演活動を千葉県内で始めました。

1990年代後半からフリーター、2000年代に入ってからはニートと呼ばれる層が社会的な課題として広く認識されるようになったことを受け、鳥居氏はこの問題に焦点を当てた活動を強化します。自身の講演内容をまとめた小冊子を作成し、東京や千葉の高校に送付したところ、教育現場での活用を希望する声が多く寄せられ、学校関係者の間で評判となりました。

この活動はさらに広がりを見せ、2005年には文部科学省の助成事業にも採択されました。「フリーター・ニートになる前に受けたい授業」と銘打たれた講演は、小・中・高・大学の児童、生徒、学生だけでなく、その保護者や教員など、対象を広げて展開されるようになりました。

講演の主な内容

鳥居氏の講演では、主に正規雇用者と非正規雇用者（フリーター）との間に存在する経済的・社会的な格差に焦点が当てられています。

経済的な格差

鳥居氏は、正規雇用者とフリーターが生涯にわたって得る収入には極めて大きな差が生じると主張します。具体的には、定年まで働き続けた場合、生涯賃金だけでもおよそ2億円の差が生じる可能性を指摘しています。大卒者の生涯賃金が約3億円、短大卒が約2.8億円、高卒が約2.7億円とされるのに対し、フリーターは約5000万円程度に留まるとの試算を示しています。

さらに、フリーターには基本的に退職金がなく、老後の生活を国民年金に頼らざるを得ない状況についても言及しています。しかし、フリーターの中には国民年金保険料を納めていない人も多く、これにより本来受給できるはずの年金（約1200万円と試算）も受け取れなくなると説明しています。生涯賃金、退職金、年金を合計した生涯所得の格差は、正規雇用者とフリーターの間でおよそ3億円にも及ぶとし、鳥居氏はこの状況を「フリーター3億円事件」と名付けて警鐘を鳴らしています。

また、医療費についても、健康保険への加入状況によって負担額が大きく異なると指摘しています。例えば風邪をひいた際の医療費は、正規雇用者で健康保険に加入していれば自己負担が約1500円程度であるのに対し、健康保険に加入していないフリーターは、より高額な自己負担（例：約5000円）となる場合があることを示しています。諸経費を含めるとさらに負担は増えるため、「『ゴホン』といったら諭吉（1万円）が飛ぶ！」という言葉で、非正規雇用の経済的なリスクを端的に表現しています。

社会的な立場と偏見

鳥居氏は、一度フリーターとしてのキャリアを経験すると、その後に正規雇用として採用されることが難しくなる現状も問題視しています。2003年版の国民生活白書に掲載されたデータでは、新卒時に正規雇用だった者の約6割がその後も正規雇用を維持しているのに対し、新卒時フリーターだった者が正規雇用に移行できたのは約3割に過ぎないという事実を示し、企業側がフリーター経験者を正規採用に際して消極的であることの裏付けとしています。鳥居氏は、フリーターとしての経歴がその後の就職活動において不利に働く可能性を、「フリーター歴は“履歴書を汚す”のと同じだ」という強い言葉で表現し、早期のキャリア形成の重要性を訴えています。

批判と議論

鳥居氏の主張に対しては、一部から批判的な意見も出ています。フリーターやニートの増加には、「就職氷河期」のような社会構造的な要因や、企業側が非正規労働者を安価な労働力として利用しているという実態も影響しているにもかかわらず、鳥居氏がこれらの点に触れず、個人の選択や努力に起因する「自己責任論」に偏っている点が指摘されています。

評論家の後藤和智氏などが鳥居氏の説に疑問を呈しており、後藤氏は著書『「ニート」って言うな!』の中で鳥居氏の主張に異論を唱えています。これに対し、鳥居氏も後藤氏の著書の内容について反論するなど、議論も存在しています。また、鳥居氏自身は、自らを批判する人々を「サヨク系ばかりだ」と表現するなど、独自の視点を示しています。

著書

鳥居徹也氏の主な著書には以下のものがあります。

『フリーター・ニートになる前に読む本』（三笠書房、2005年）
『親が子に語る「働く意味」』（WAVE出版、2006年）
* 『フリーター・ニートにさせないキャリア教育の授業』（学陽書房、2007年）

これらの著書を通じて、鳥居氏は自身の提唱する「働く意味」やキャリア教育に関する考えを発信しています。

（本項は提示された情報を基に記述しています）

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