後藤和智

後藤和智：若者論を批判する批評家

後藤和智（1984年11月15日生まれ）は、現代社会における若者論を中心に、多岐にわたる社会批評を展開している日本の批評家です。彼は特に、若者をステレオタイプで批判する言説を「俗流若者論」と名付け、その問題点を鋭く指摘することで知られています。

生い立ちと学歴

後藤和智は岩手県釜石市で生まれ、宮城県仙台市で育ちました。宮城県仙台第二高等学校を経て、東北大学工学部建築学科を卒業後、同大学院工学研究科 災害制御研究センター 地震地域災害研究分野で学び、博士課程前期（都市・建築学専攻）を修了しました。彼の学術的な背景は、社会現象を多角的に分析する視点の形成に影響を与えていると考えられます。

若者論との出会い

後藤が若者論に関心を持つようになったきっかけは、1990年代後半から2000年代初頭にかけてのマスメディアにおける若者像の描かれ方に対する疑問でした。テレビ番組『学校へ行こう!』の「未成年の主張」に出演した経験や、仙台市成人式実行委員会での活動を通じて、彼はメディアが作り出す若者像と現実の若者たちの間に存在するギャップを痛感します。特に、2000年頃の少年犯罪報道における「キレる17歳」といったレッテル貼りに強い違和感を覚え、高校時代から若者を批判する言説の収集と分析を開始しました。その成果は、河北新報や論座の読者投稿欄への投稿として結実しました。

インターネットを通じた活動

2004年11月には、ブログ『後藤和智事務所 –若者報道と社会–』を開設し、ニートを批判する言説に対する批判を展開しました。このブログが光文社の編集者の目に留まり、2006年に本田由紀、内藤朝雄との共著『「ニート」って言うな!』を出版。2008年には、単著『「若者論」を疑え!』を発表し、若者論に対する批判的な視点を確立しました。宮崎哲弥は『「ニート」って言うな!』を「ネット時代の言論のあり方として記念碑的である」と評しました。

後藤はインターネットを主な活動の場とし、俗流若者論をまとめた同人誌をコミックマーケットやウェブサイトで販売。非論理的、論拠が曖昧な言説や発言者を批判しています。特に、ロスジェネ論客が日本の右傾化を招いたと批判し、左派批判への憤りを表明しています。

自己批判とオタク論

後藤自身もオタク的趣味を持つ一方で、オタク批判にも転じています。特に、オタク層がポリティカル・コレクトネスを守らないことを批判し、表現規制反対派の言動を「現実そのものをコンテンツにして遊んでいる」と非難しています。本田透などによるオタク擁護論に対しては懐疑的な立場を取り、本田の著書『電波男』がオタクにおける反フェミニズムに与えた影響は大きいと論じています。

また、左派的な思想を持つオタクに対しても批判的な視線を向けており、Twitter上での左派論客による若い世代への憑依や仮託を「仲間内での差異化によって居場所を見出すさもしい”オタク”根性」と批判しています。

社会的な活動

2020年10月には、菅義偉首相による日本学術会議任命拒否問題に抗議声明を発表。2022年7月には、辻元清美事務所襲撃事件に対する「自業自得論」に対して非難声明を発表するなど、社会的な問題にも積極的に関与しています。

著書

単著
『「若者論」を疑え!』（宝島社新書、2008）
『おまえが若者を語るな!』（角川oneテーマ21、2008）
『「あいつらは自分たちとは違う」という病: 不毛な「世代論」からの脱却』（日本図書センター、2013）
共著
『「ニート」って言うな!』本田由紀、内藤朝雄共著（光文社新書、2006）
* 『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』北田暁大、栗原裕一郎 共著（イースト新書、2017）

後藤和智は、若者論というテーマを通じて、現代社会の様々な問題点を浮き彫りにする批評家として、今後も注目される存在です。

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