鳩のなかの猫

鳩の中の猫（原題：Cat Among the Pigeons）

『鳩の中の猫』は、1959年にアガサ・クリスティによって発表されたエルキュール・ポアロシリーズの長編推理小説です。この作品は、単なる推理小説の枠を超え、サスペンス要素が色濃く反映されています。

舞台背景とテーマ

物語の舞台となるのは中東の架空の国、ラマット王国です。この国では、若き国王アリ・ユースフが民主化を目指していましたが、革命が勃発します。この設定は1958年に実際に起きたイラクのクーデターを彷彿とさせるもので、クリスティは背景をリアルに描写しています。また、作中のポアロは物語の後半で登場し、友情出演のような形で活躍します。彼の存在が謎解きを引き立てる重要な要素となっています。

あらすじ

物語は、国王ユースフが親友のボブ・ローリンスンと共に脱出を試みるシーンから始まります。しかし、飛行機は事故に遭遇し、二人とも命を落とします。ローリンスンは、事前に国王が迫る危機を察知し、王家の宝石を姪ジェニファーのテニスラケットに隠して密かに国外に持ち出すことに成功します。3か月後、ジェニファーはイギリスの名門女子校メドウバンクに入学します。

メドウバンクでは、教員のチャドウィックとジョンソンが体育館の明かりと銃声を聞き、そこで教員スプリンガーが殺害されているのを発見します。ジェニファーは友人のジュリアにラケットが重いと訴え、互いにラケットを交換しますが、実はその交換が事件を引き起こす引き金となるのです。

謎が深まる

次々と起こる殺人事件に学校は不安に包まれ、家族たちは生徒たちを自宅に連れ戻します。しかし、残ったジュリアはラケットを調べ、宝石を発見します。彼女は学校から逃げて、ポアロにこの事件の調査を依頼します。ポアロはメドウバンクでの殺人事件を捜査し、さらなる殺人が発生します。

ポアロは、実はこの学校に通っているシャイスタが偽者で、本物の王女が誘拐されている可能性があることを明らかにします。宝石を探すために入り込んだ犯罪集団による事件であり、スプリンガーやブランシュの殺害の背後には、宝石を巡る争いがあったのです。ポアロは全ての事件を結びつけ、真相に迫っていきます。

最後の解決

事件が解決した後、バルストロード校長は後継者としてリッチを任命し、学校の再建に努めることを決めます。また、ジュリアは宝石を発見した御褒美としてエメラルドを受け取ります。このように、『鳩の中の猫』は、サスペンスと推理が交織した緊迫した物語であり、キャラクターたちの人間模様もまた魅力の一つです。

主な登場人物

• - オノリア・バルストロード：メドウバンクの校長で、後継者を探している。
• - チャドウィック：数学教師。バルストロードの親友。
• - グレイス・スプリンガー：初めの被害者で体育教師。
• - エレノア・ヴァンシッタート：教師で後継者候補。
• - エルキュール・ポアロ：私立探偵で事件解決に乗り出す。

この作品は、クリスティの独特なスタイルとサスペンスが絡み合った魅力的な物語として、多くの読者に愛され続けています。

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