鶴田匡夫

鶴田匡夫：光学技術と啓蒙の光を放つ生涯

鶴田匡夫氏は、日本の光学技術の発展に大きく貢献した技術者であり、その一方で、光学技術史に関する分かりやすい解説書で広く一般にも知られています。1933年生まれの氏は、東京大学理学部物理学科卒業後、日本光学工業（現ニコン）に入社。長年にわたり同社で技術者として活躍し、開発本部長、副社長、そして顧問を歴任しました。

ニコン在籍中は、高度な光学技術の開発に尽力しました。その専門知識と経験は、同社の発展に大きく寄与したことは間違いありません。1967年には東京大学より「偏光型シャリング干渉計の応用に関する研究」で工学博士号を取得しており、その高い研究能力を示しています。

しかし、鶴田氏の功績は、企業活動のみにとどまりません。氏は、長年にわたり月刊誌『O plus E』で「光の鉛筆」という連載を執筆しました。この連載は、光学技術の歴史を、専門用語を避け、分かりやすく解説することを目指したものでした。難解な技術史を、一般の人々にも理解できるよう平易な言葉で説明する氏の力量は高く評価されています。

「光の鉛筆」シリーズは単なる解説記事ではなく、徹底的な文献調査に基づいた、信頼性の高い内容を特徴としています。光学技術の歴史を正確に、かつ魅力的に伝えることに成功したこの連載は、高い評価を受けました。その結果、第4回応用物理学会業績賞、そして第3回光工学功績賞（高野榮一賞）を受賞しています。これらの賞は、氏の光学技術への貢献と、その啓蒙活動への功績を称えたものです。

「光の鉛筆」シリーズは単行本としても出版され、広く読まれています。新技術コミュニケーションズから刊行された最初の数冊に加え、その後アドコム・メディアからも複数冊が出版されました。これらの書籍は、光学技術に関心を持つ多くの人々の知識向上に役立っており、その影響力は計り知れません。

さらに、培風館より出版された『応用光学I』と『応用光学II』は、光学技術の専門書として、教育機関や研究機関で広く利用されています。これらの書籍は、光学技術を体系的に学ぶための貴重な資料として、高い評価を受けています。

鶴田匡夫氏の生涯は、光学技術の研究開発、企業活動、そして技術啓蒙という、三つの側面から光り輝いています。氏の功績は、日本の光学技術の発展に貢献しただけでなく、多くの人々に光学技術への理解を深める機会を与えた点にもあります。氏の残した業績は、これからも光学技術の発展に大きな影響を与え続けることでしょう。

主な経歴

1956年：東京大学理学部物理学科卒業、日本光学工業（現ニコン）入社
1967年：東京大学より工学博士を取得
1987年：ニコン取締役
1993年：ニコン常務取締役開発本部長
1997年：ニコン代表取締役副社長
2001年：ニコン顧問
1988・1989年度：日本光学会幹事長

主な著書

『光の鉛筆』シリーズ（全11巻）
* 『応用光学I』『応用光学II』

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