鹿沼市クレーン車暴走事故

鹿沼市クレーン車暴走事故

2011年4月18日、栃木県鹿沼市で発生したクレーン車暴走事故は、てんかんの持病を持つ男性が運転中に発作を起こし、多数の小学生が犠牲となった悲惨な交通事故です。この事故は、個人の責任だけでなく、社会全体の安全対策のあり方についても大きな問題を提起しました。

事故の概要

2011年4月18日午前7時45分頃、鹿沼市樅山町の国道293号で、集団登校中の小学生の列に10トンクレーン車が突っ込みました。クレーン車はその後、民家の垣根と作業小屋の一部を破壊して停止。この事故で、小学生6名が命を落としました。単独事故における6名の死亡は、後に発生した京都祇園軽ワゴン車暴走事故に次ぐ惨事となりました。

事故を起こした運転者

クレーン車を運転していた当時26歳の男性は、てんかんの持病を抱えていました。過去にも交通事故を繰り返しており、この事故の以前にも小学生をはねて重傷を負わせる事故を起こし、執行猶予中の身でした。しかし、運転免許の取得や更新の際に持病を申告せず、医師からの再三の注意にも関わらず、薬の服用を怠っていたことが判明しました。事故前日には深夜までチャットをしていたため、睡眠時間は約3時間半程度だったとされています。さらに、同居していた母親も、息子の度重なる事故にも関わらず自動車を買い与え、事故当日も薬を服用していないことを知りながら注意を怠っていました。

刑事裁判

男性は自動車運転過失致死罪で逮捕、起訴されました。検察側は当初、危険運転致死罪の適用を検討しましたが、「故意」の立証が困難であると判断し、自動車運転過失致死罪での起訴となりました。宇都宮地裁は、男性が薬の服用を怠り、過去にも事故を起こしていることから、てんかんの発作を予見できたと認定。懲役7年の実刑判決を言い渡しました。しかし、遺族からは、執行猶予中に再び重大な事故を起こしたにも関わらず、刑が軽すぎるという批判の声があがりました。

民事裁判

遺族11人は、男性本人とその母親、そして男性が勤務していた会社に対し、総額3億7770万円の損害賠償を求めて提訴しました。宇都宮地裁は、3者の責任を認め、合計1億2500万円の賠償を命じました。特に、母親に対して、成人である息子の内服管理責任を認めた点は注目されました。母親側は、薬の服用は本人の責任であり、親に注意義務はないと主張しましたが、裁判所はこれを認めませんでした。

遺族の運動と法改正

遺族は、持病を隠して運転免許を取得、更新した場合の事故に危険運転致死傷罪を適用すること、てんかん患者が不正に免許を取得できないようにすることを求めて署名活動を行いました。法務省は、危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の中間的な罪の新設を検討しましたが、遺族からは、中間の罪が新設されたことで、かえって危険運転致死傷罪の適用が見送られる可能性を指摘する声も上がりました。しかし、2014年5月20日には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律（自動車運転死傷行為処罰法）が施行され、運転に支障を及ぼす病気の影響により、正常な運転が困難な状態で人を死傷させた場合、危険運転致死傷として処罰されることになりました。この法改正は、遺族の長年の訴えが実を結んだものでした。

関連書籍

伊原高弘『あの日～鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の想い～』下野新聞社、2014年3月

関連項目

てんかん
危険運転致死傷罪
京都祇園軽ワゴン車暴走事故
池袋暴走事故 (2015年)

外部リンク

ウィキニュースに関連記事があります。登校中の小学生の列にクレーン車、はねられた児童6人全員死亡

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