麒麟獅子

麒麟獅子とは

麒麟獅子（きりんじし）は、鳥取県東部（因幡地方）と兵庫県北部（但馬地方）に伝わる、独特な獅子舞の一種です。通常の獅子舞とは異なり、伝説上の聖獣である麒麟をモチーフとしている点が大きな特徴です。

麒麟獅子の特徴

獅子頭: 金色で面長、一本角があり、耳が逆立っているのが特徴です。これは麒麟の姿を模したものです。
胴幌: 赤色を基調とし、背筋の部分は黒色となっています。
猩々: 道化役として登場し、麒麟獅子舞を盛り上げます。

麒麟獅子の歴史

麒麟獅子の起源は、江戸時代初期に遡ります。1650年、鳥取藩主の池田光仲が鳥取東照宮（現在の樗谿神社）を建立した際、権現祭の神幸行列で披露されたのが始まりとされています。徳川氏・池田氏の権威を象徴するものとして、獅子を聖獣の麒麟に、道化を猩々に置き換えたと考えられています。

鳥取藩では、獅子庄屋として小椋家と佐藤家の2家が定められ、麒麟獅子舞を伝承しました。その後、因幡国内や隣接する但馬国西部にも広がり、地域ごとの特色を加えて発展しました。

麒麟獅子の現状

現在、因幡地方には百数十か所、但馬地方には十数か所の麒麟獅子が伝えられています。地域によっては、県や市、町の無形民俗文化財に指定され、保護されています。

鳥取県指定無形民俗文化財の例:

大和佐美命神社獅子舞 - 大和佐美命神社（鳥取市）
宇倍神社獅子舞 - 宇倍神社（鳥取市）
下味野神社の麒麟獅子舞 - 鳥取市下味野
倉田八幡宮の麒麟獅子舞 - 鳥取市馬場
賀露神社の麒麟獅子舞 - 鳥取市賀露町北
虫井神社の麒麟獅子舞 - 八頭郡智頭町大字大呂

兵庫県指定無形民俗文化財の例:

居組の麒麟獅子舞 - 大歳神社（美方郡新温泉町）
麒麟獅子舞 - 宇都野神社（美方郡新温泉町）
三尾の麒麟獅子舞 - 八柱神社・三柱神社（美方郡新温泉町）

麒麟獅子と信仰

麒麟獅子には、頭を噛んでもらった子供は長生きするという言い伝えがあり、麒麟獅子舞が行われる際には多くの人が集まります。地域によっては、五穀豊穣や無病息災を祈願する神事として重要な役割を担っています。

フィクションへの登場

2005年の映画『妖怪大戦争』（角川映画）には、麒麟獅子と麒麟送子（きりんそうし）が登場し、その勇壮な姿が描かれました。

麒麟獅子にちなんだ命名

鳥取市内を観光する際に便利な観光周遊バスは「ループ麒麟獅子」と名付けられています。

麒麟獅子は、地域の人々にとって大切な文化であり、信仰の対象となっています。その独特な姿と舞は、見る人々を魅了し続けています。

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