宇倍神社

宇倍神社（うべじんじゃ）

鳥取県鳥取市国府町宮下にある宇倍神社は、因幡国の一宮として知られる古社です。式内社（名神大社）であり、現在は神社本庁の別表神社となっています。その歴史は古く、創建は古代に遡ると考えられています。

社名

古代には「うへ」神社と呼ばれていたようですが、その語源ははっきりしていません。一説には、境内社の国府神社に合祀された「上神社」に由来するという説があります。

祭神

主祭神は武内宿禰命（たけうちのすくねのみこと）です。武内宿禰命は、360余歳という長寿を保ったとされ、長寿の神として信仰されています。また、明治時代には、神社で初めて拝殿が紙幣の図案に採用されたことがあり、その後も数度、社殿や祭神が紙幣の図案となったことから、金運や財宝の神としても知られるようになりました。

ただし、『神祇志料』によると、祭神は『国造本紀』にある因幡国造の祖先、彦多都彦命（ひこたつひこのみこと）とされており、本来は伊福部氏の祖神を祀っていたものが、後に武内宿禰命を祀るようになったとも考えられています。

歴史

神社の創建は、祖神を祀ったとされる伊福部氏がこの地に居住していた頃と推測されています。『因幡国伊福部臣古志』には、伊福部氏の第16世である伊其和斯彦宿禰（いきわしひこのすくね）が因幡国造となり、成務天皇から賜った大刀などを神として祀ったことが、当社の創祀である可能性が示唆されています。

吉田家本『延喜式神名帳』には、仁徳天皇55年、360余歳の武内宿禰が因幡国の宇倍山中腹の亀金山に双履を残して行方不明になったという記述があります。本殿裏に残る2つの「双履石」は古墳の一部であり、後世に武内宿禰に関する伝説が作られたと考えられています。この地は、古代から因幡国の政治・文化の中心であり、当社も古くから尊崇されてきました。『延喜式神名帳』では、因幡国唯一の名神大社に列せられ、一宮とされました。

中世以降、社領を失い衰退しましたが、江戸時代初期に鳥取藩主池田光仲から社領の寄進を受け、社殿が復興されました。明治4年には国幣中社に列し、戦後は神社本庁の別表神社となっています。

神階

嘉祥元年（848年）には、霊験を示して国府の火事を鎮火したため、従五位下が授けられ、官社に預けられました。その後、貞観年間にかけて急速に昇進し、正三位にまで至りました。

神職

当初より、伊福部氏が神職を世襲していたとされています。伊福部氏は、大己貴命の神裔を称していますが、その系譜には混乱も見られます。明治13年には、第65世の伊福部信世（作曲家伊福部昭の祖父）が神職を離れました。

境内

本殿

現在の本殿は、明治31年（1898年）に再建されたものです。正面三間、側面二間の三間社流造で、正面一間に向拝が設けられています。同年には、幣殿と拝殿も再建されました。明治32年（1899年）に発行された五円紙幣に描かれた拝殿は、この時のものです。

双履石（そうりせき）

本殿後背の亀金山（亀金岡）上にあり、祭神終焉の地と伝えられる磐境として信仰されています。直下には古墳時代中期に築造された円墳があり、竪穴式石室からは副葬品が出土しています。

摂末社

国府神社

本殿左手に鎮座する神社で、建御雷神（たけみかづちのかみ）をはじめとする10柱の神々を祀っています。大正7年に付近の6社を合祀し、現在の社名となりました。

主な祭事

例祭（4月21日）

「国府の祭り」とも呼ばれ、麒麟獅子舞が奉納されます。また、神幸祭では、元禄時代に鳥取藩の大名行列を模した武者・奴行列が供奉します。

文化財

鳥取県指定文化財

有形民俗文化財：宇倍神社御幸祭祭具 23点
無形民俗文化財：宇倍神社獅子舞

特に、宇倍神社の獅子舞は、因幡地方特有の麒麟獅子舞で、山陰地方独特の獅子舞の原形を伝えているとされています。また、境内林は県の自然保護林に指定されています。

現地情報

所在地：鳥取県鳥取市国府町宮下字一宮651

交通アクセス：鳥取駅（JR西日本山陰本線）から、日ノ丸バス中河原線で「宮下」バス停下車

周辺：因幡万葉歴史館、因幡国庁跡、万葉の館、雨滝、鳥取藩主池田家墓所、伊福吉部徳足比売の墓跡、岡益の石堂、梶山古墳、因幡三山など、歴史と自然に触れることができるスポットが多数あります。


宇倍神社は、その長い歴史と文化的な価値から、多くの人々を魅了する神社です。参拝の際には、ぜひその歴史と文化に触れてみてください。

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