麗わしき鬼

『麗わしき鬼』：愛と激情の30年超えの物語

2007年4月2日から6月29日にかけて、東海テレビ・フジテレビ系列で放送された昼ドラマ『麗わしき鬼』。月曜から金曜の13時30分から14時まで放送され、同性愛、セクシュアリティ、代理母出産といった、性と生をテーマにした重厚な物語が展開されました。

本作は、異母姉妹である洵子と悠子の、30年以上にわたる愛と憎しみの物語を描いています。脚本を手掛けたのは、数々の話題作を生み出してきた中島丈博氏。同氏の代表作である『牡丹と薔薇』、『偽りの花園』に続く、姉妹の愛憎劇三部作の最終章として位置付けられています。

物語は、1972年、同じバーで働く親友同士の富弓と時子の関係から始まります。時子は夫からのDVに苦しみ、富弓は裕福な家庭の御曹司である英矢との結婚を控えていました。二人の運命は、予想だにしない事件によって大きく狂い始めます。

物語は、複数の主要登場人物たちの複雑な人間関係や、それぞれの葛藤、そして衝撃的な事実が次々と明かされていきます。登場人物たちの過去の出来事、現在の苦悩、そして未来への希望が絡み合い、視聴者を深い感情の渦に巻き込んでいきます。

特に、登場人物たちの性的な指向や関係性の描写は、当時の昼ドラとしては非常に斬新で、話題となりました。ゲイ用語やレズビアン用語が頻繁に登場し、同性愛を取り巻く社会の偏見や、当事者たちの苦悩がリアルに描かれています。

また、ドラマ内では、生クリームを塗った携帯電話「携帯ケーキ」という、独特の愛憎料理が登場するなど、視聴者の記憶に残る演出も随所に散りばめられています。

平均視聴率は5.4%、最高視聴率は7.0%と、決して高い数字ではありませんでしたが、熱狂的なファンも多く、放送終了後も高い評価を受けています。そのため、放送終了後には地方局を中心に多くの局で再放送が行われ、また、原作を基にした携帯コミックスも発行されました。現在ではDVD化はされていませんが、U-NEXTで配信されており、改めて視聴することが可能です。

脚本家の中島丈博氏は、1992年にゲイのカップルと彼らに惹かれた女性を描いた映画『おこげ』を製作・原作・脚本・監督しており、本作でもその経験が活かされていると言えるでしょう。

『麗わしき鬼』は、様々な社会問題や人間ドラマを繊細に描き、視聴者に深く考えさせる作品です。再放送や配信サービスで視聴できる機会があれば、ぜひ一度ご覧になってみてください。

主要キャスト

本作には、川上麻衣子、大沢逸美、増沢望、内浦純一、山下容莉枝など、実力派俳優陣が出演しています。それぞれの俳優陣が、複雑な人間関係と激しい感情の揺れ動きを巧みに演じ、物語に深みを与えています。

その他の情報

・ナレーションは、オネエ言葉を話す壱岐みちる（内浦純一）が担当し、独特の語り口がドラマに彩りを添えています。

・撮影協力には、雑司が谷鬼子母神など、都内の有名な場所が使用されています。劇中で重要なシンボルとして登場する「すすきみみずく」は、実際に雑司が谷鬼子母神近くの店で販売されているとのことです。

・主題歌は工藤静香が担当し、劇中歌にはSYO-1が参加しています。

『麗わしき鬼』は、単なる愛憎劇にとどまらず、性、家族、社会など、多様なテーマを織り交ぜた、深く考えさせられる作品です。高い評価を得ている作品だけに、機会があればぜひご覧になってみてください。

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