麗水・順天事件

麗水・順天事件の詳細

麗水・順天事件は、1948年10月19日に韓国全羅南道麗水郡で発生した大規模な軍隊の反乱と民間人の虐殺事件です。この事件は、韓国の建国からわずか数ヶ月後の混乱した状況下で起こり、当時の国防に対する信頼を揺るがすこととなります。

背景

大韓民国が1948年8月15日に建国されると、共産主義政党である南朝鮮労働党は政府の内部に工作員を送り込み、国軍での騒乱や反乱の機会をうかがっていました。10月19日、済州島で起きた済州島四・三事件の鎮圧に動員された国防警備隊第14連隊の隊内では、南労党のメンバーが反乱を扇動し、多くの隊員がこれに応じたことで一気に反乱へと発展しました。

事件の経過

反乱は麗水郡から隣接する順天郡にも広がり、李承晩大統領は直ちに鎮圧部隊を派遣しました。10月19日夜、南労党の組織が兵器庫を占拠し、隊員を集めて反乱を呼びかけました。結果的に約2000名の隊員がこれに賛同し、麗水邑の警察署や郡庁を占拠し、政治犯を解放し、李承晩政権に対する攻撃を開始しました。

反乱軍はすぐに周辺地域に進出し、順天郡の駐留部隊とも合流。李政権は10月21日に戒厳令を敷き、正規軍を派遣しましたが、反乱軍は一時的に優勢に立ちました。10月23日には順天攻撃が開始されるも、反乱軍主力はすでに山岳地帯に退避しており、町はほとんど抵抗もなく鎮圧されました。

鎮圧とその後

10月27日まで続いた市街戦により、麗水は完全に鎮圧されましたが、その過程で市民や非武装の人々が大量に殺害されました。政府による報復によって、数千人の市民が密かに処刑され、事件後の混乱の中で無関係な多くの人々もその犠牲になったとされています。この事件による死者は2976名、行方不明者887名、そして負傷者1407名に達し、首謀者ら約152名が軍法会議で死刑となりました。

社会的影響

事件の結果、韓国軍内での南労党員の浸透が明らかになり、大規模な粛清が実施され、大勢の人々が軍から排除されました。この事件は、韓国国内における左派勢力の抑圧を促進し、1948年12月には国家保安法が制定される契機となりました。事件後、数多くの人々が日本へ避難し、在日韓国人としての生活を余儀なくされることになりました。

事件の評価

麗水・順天事件は、韓国の歴史における重要な出来事であり、国家反逆のレッテルを貼られた住民たちは長い沈黙を強いられました。この事件の全容は1990年代に入って初めて公にされ、その影響は今も続いていると考えられています。政府による大量虐殺の疑いが持たれる中、事件の真相を追求する声は現在でも残っています。

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