黄昏 (1952年の映画)

黄昏：儚くも美しい運命の物語

1952年、アメリカで公開されたウィリアム・ワイラー監督による映画『黄昏』(原題:Carrie)は、多くの観客を魅了したドラマ作品です。ローレンス・オリヴィエとジェニファー・ジョーンズといった名優たちの演技、そしてセオドア・ドライサーの小説『シスター・キャリー』とヴェルディのオペラ『椿姫』から着想を得た、繊細で美しい物語が本作の魅力です。日本では公開年が1951年と紹介されることもありますが、実際には1952年の公開となります。製作期間は1950年8月から同年11月でした。

物語の中心人物は、田舎娘キャリー・ミーバーです。彼女は姉夫婦を頼ってシカゴへとやってきますが、工場で怪我をして職を失い、路頭に迷ってしまいます。そこで、以前汽車で出会ったチャーリー・ドルーエという男に頼り、再会を果たします。チャーリーはキャリーに金を渡し、一流レストラン「フィッツジェラルド」での食事に誘いますが、これはキャリーにとって、運命の歯車が回り始める瞬間でした。

キャリーはチャーリーから受け取った金を返すつもりでレストランを訪れますが、支配人ハーストウッドの計らいで、結局はチャーリーとの食事へと繋がります。言葉巧みにキャリーを口説いたチャーリーは、彼女を自分の部屋へと連れ込み、そのまま同棲生活が始まります。しかし、近所の目が気になっていたキャリーは、チャーリーに結婚を迫りますが、彼はのらりくらりとかわし続けるばかり。キャリーの苛立ちも募っていきます。

そんなある日、チャーリーはハーストウッドを自宅に招き、仕事の都合で家を空ける間にキャリーの世話を頼みます。既婚者であるハーストウッドは、妻との関係が冷え切っていたこともあり、素朴で純粋なキャリーに惹かれていきます。キャリーもまたハーストウッドに心を奪われていきます。2人の関係が妻に知られると、ハーストウッドは衝動的に店の金を盗み、キャリーと駆け落ちしてニューヨークへと向かいます。

ニューヨークで2人だけの生活を始めますが、盗んだ金を返さなければならず、一文無しになってしまいます。ハーストウッドは仕事にも就けなくなり、2人の生活は困窮の極みに達します。そんな中、キャリーは舞台女優として活動を始め、成功への道を歩み始めます。しかし、ハーストウッドを元の家族に返そうと、彼に息子に会うよう促し、その隙に姿を消します。ハーストウッドは息子の元を訪れますが、嫁の裕福な両親の威圧感に圧倒され、声をかけずにニューヨークに戻ります。しかし、そこにはキャリーの姿はありませんでした。

数年後、キャリーは人気女優として大成功を収めていました。再会したチャーリーから、ハーストウッドが店の金を盗んだために元の裕福な世界に戻れないことを知ったキャリーは、ハーストウッドの行方を捜索しますが、浮浪者になったという情報しか得られません。そしてある夜、公演後の楽屋で、物乞いをしている浮浪者を見つけます。それは、やつれた姿で餓死寸前だったハーストウッドでした。

迷惑をかけまいとするハーストウッドに、キャリーは「明日は服を新調しましょう！」と、前借りを頼みに行きます。その隙に、ハーストウッドはキャリーの財布からコインを1枚だけ取り、立ち去ろうとします。楽屋を出る際にガスコンロのガスを少しだけ出し、指先を近づける彼の姿は、既に死を覚悟しているようでした。

『黄昏』は、キャリーの波乱万丈な人生、そして彼女を取り巻く人々の複雑な感情を、繊細で美しい映像と演技で描き出した傑作です。運命の残酷さと、人間の心の機微が丁寧に描かれ、観る者の心に深く刻まれる、忘れられない作品となっています。

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