黄永祚

黄永祚（ファン・ヨンジョ）：モンジュイックの英雄

黄永祚（황영조、ファン・ヨンジョ）は、1970年3月22日、韓国の江原道三陟郡（現在の三陟市）で生まれました。彼は陸上競技、特に長距離走・マラソンで傑出した才能を発揮し、1992年バルセロナオリンピック男子マラソンでの金メダル獲得は、韓国スポーツ史における最も輝かしい瞬間の一つとして語り継がれています。

マラソンへの道

意外なことに、黄永祚は元々自転車競技の選手でした。しかし、高校時代にテレビで日本のマラソンランナー、中山竹通の走る姿を見たことがきっかけで、マラソンに転向することを決意します。中山の美しいフォームに感銘を受け、自らもマラソンの世界に飛び込んだのです。

当時、韓国の長距離選手たちは、山口県防府市にあったカネボウ陸上競技部の貞永信義監督の指導の下、頻繁に合同合宿を行っていました。黄永祚も高校時代に防府読売マラソン高校生の部（10km）で優勝するなど、その才能の片鱗を見せています。バルセロナオリンピックで優勝した後、彼のコーチであった鄭奉守（チョンボンス）は、「（優勝の）秘密なんかありません。貞永さんに教えてもらったんですから」と語り、貞永の指導が彼の成功に大きく貢献したことを明かしました。

オリンピックの金メダル

黄永祚は若い頃からトラック競技でも有望なランナーでしたが、1991年の初マラソンでの優勝を機に、マラソンに集中するようになりました。そして、1992年バルセロナオリンピックを迎えます。オリンピックまでの3回のマラソンで、優勝2回、2位1回という好成績を収めていた黄永祚にとって、バルセロナは4回目のマラソンでした。

レースはスローペースで進み、中間点を過ぎてもまだ30人もの選手が先頭集団にいました。黄永祚もその中にいましたが、徐々に集団はばらけ始め、35キロ地点では日本代表の森下広一との一騎打ちとなります。そして、40キロ地点手前のモンジュイックの丘で、黄永祚がスパート。森下を振り切り、見事金メダルを獲得しました。この勝利は韓国国民を熱狂させ、彼は「モンジュイックの英雄」として称えられることになりました。

その後

バルセロナオリンピックの後、黄永祚は脚部の不調に悩まされ、レースへの出場を大幅に減らしました。しかし、1994年のボストンマラソンで4位に入賞し、見事に復活を遂げます。同年、広島アジア競技大会では、日本代表の早田俊幸との激しい競り合いを制し、優勝を果たしました。しかし、1996年アトランタオリンピックは、再び怪我のために出場資格を得ることができず、その後、惜しまれつつも現役を引退しました。

マラソン全成績

黄永祚は、その短い競技生活の中で、数々の輝かしい記録を残しました。

1991年3月17日 ソウル 優勝 2時間12分35秒
1991年7月21日 シェフィールド・ユニバーシアード 優勝 2時間12分40秒
1992年2月2日 別府大分毎日マラソン 2位 2時間08分47秒
1992年8月9日 バルセロナオリンピック 優勝（金メダル） 2時間13分23秒
1994年4月18日 ボストンマラソン 4位 2時間08分09秒（生涯ベスト）
1994年10月9日 広島アジア競技大会 優勝 2時間11分13秒
1995年10月28日 春川 2位 2時間11分32秒
1996年3月24日 慶州 29位 2時間25分45秒

まとめ

黄永祚は、その卓越した才能と努力によって、韓国マラソン界に燦然と輝く足跡を残しました。彼の不屈の精神と、モンジュイックの丘で見せた感動的な勝利は、今もなお多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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