黄河決壊事件

黄河決壊事件の概要

黄河決壊事件（こうがけっかいじけん）は、1938年6月に日中戦争の初期に発生した重要な出来事であり、国民革命軍が日本軍に対抗するために実施した焦土作戦の一環として位置付けられています。この作戦では、国民革命軍が黄河の堤防を破壊し、結果的に巨大な洪水を引き起こしました。この洪水は、日本軍の進軍を阻止する意図があったものの、大規模な被害をもたらし、数万の溺死者や数百万人の被災者を生む結果となりました。

背景

日中戦争（支那事変）が始まった1937年以降、日本軍は急速に中国の中心部へ進攻を開始し、1938年6月には燕文の中心地である開封を占拠し、鄭州の攻略も間近となっていました。鄭州は交通路の要所であったため、この都市の陥落は中国政府にとって深刻な危機をもたらすものでした。このような情勢を受けて、国民革命軍の劉峠第一戦区副司令官は、堤防を破壊し洪水を起こすことで日本軍の前進を阻止する計画を提案しました。この案は、蔣介石の承認を得て実行に移されました。

堤防破壊の準備

国民革命軍は、1938年5月頃から堤防の破壊の準備を進めていました。住民の交通を遮断し、指定された地点に穴を掘る作業が行われていましたが、実際には堤防の破壊作業は未完成のままでした。日本軍に対抗するための準備が整う中、国民革命軍は兵士だけでなく、近隣の農民をも動員して作業にあたらせました。

洪水の発生

1938年6月7日、中牟付近での堤防爆破が試みられましたが失敗し、から変更とされた花園口での作業が続行されました。そして、6月9日の午前中に堤防が破壊され、黄河の水が氾濫しました。この洪水によって、河南省、安徽省、江蘇省に広がる54,000平方kmの地域が水没し、多くの農作物が壊滅的な被害を受けました。

日本軍の対応

日本軍は、堤防破壊による洪水の発生後、迅速に対応しました。日本軍の部隊は、堤防の修復作業や住民の救援活動に向かい、筏船を使って多くの人々の救助に携わりました。日本軍は現地の住民とともに防水作業を進めましたが、国民革命軍はこれを妨害し、特に日本軍が人道的活動を行う中で、住民と協力していたことを報道により広まりました。

報道と論争

事件の後、中国国民党は一貫して日本軍が洪水を引き起こしたと主張しました。その一方で、日本側では、堤防破壊は中国軍に強制された農民によるものであり、洪水は日本軍による作戦ではないと否定しました。この双方の主張はメディアを通じて広まり、その信憑性には疑問が呈されることとなります。

影響

最終的に、黄河決壊事件は広範囲にわたる被害をもたらし、数百万人が苦しむ結果となりました。この洪水の影響で、人々の生活は大きく損なわれ、農地も失われ、厳しい環境にさらされることとなりました。さらに、この事件は日本軍に対する民衆の見方を複雑にし、その姿勢を変えるきっかけになったとも指摘されています。洪水により生じた農作物の不足や、戦局の変化は、後の歴史にも大きな影響を与えました。正確な被害の数値は推定の域を出ないものの、黄河決壊事件は中国人民に深い傷を残し、記憶されるべき悲劇的な出来事となりました。

もう一度検索