黄連解毒湯

黄連解毒湯（オウレンゲドクトウ）とは

黄連解毒湯は、漢方医学において用いられる代表的な薬方の一つです。医療用医薬品として医師の処方を受けることができるほか、一般用医薬品として薬局などでも購入できます。非常に苦味が強いため、服用しやすい錠剤タイプも存在します。名前が似ている黄連湯（オウレントウ）とは異なる処方です。

黄連解毒湯の特徴

黄連解毒湯は、中国の医学書「外台秘要方」を原典としています。主な作用は、身体にこもった熱を取り除くことです。これは、黄連解毒湯が、身体の上部（上焦）の熱を冷ます黄芩（オウゴン）、中部（中焦）の熱を冷ます黄柏（オウバク）と山梔子（サンシシ）、下部（下焦）の熱を冷ます黄連（オウレン）という、4種類の生薬で構成されているためです。これらの生薬は、程度の差はあれ、すべて苦味を有し、色も黄色味を帯びています。

黄連解毒湯の適応

黄連解毒湯は、体力中等度以上で、のぼせやすく顔が赤く、イライラして落ち着かないといった傾向のある人に適しています。体力があまりない場合は、慎重な使用が求められます。漢方薬は、その人の状態（証）に合わせて使用するもので、同じような症状でも異なる薬が適していることもあります。そのため、西洋薬のように、特定の病名に対して必ず使われるとは限りません。

添付文書に記載されている適応

添付文書などには、以下のような症状への効果が期待できると記載されています。

鼻出血
不眠症
神経症
胃炎
二日酔い
血の道症
めまい
動悸
更年期障害
湿疹・皮膚炎
皮膚のかゆみ
口内炎

黄連解毒湯の作用に関する補足

黄連解毒湯は、体を冷やす作用だけでなく、炎症を鎮める作用も持っています。そのため、アトピー性皮膚炎の急な悪化や、飲みすぎによる胃腸炎などにも用いられることがあります。また、精神的な不安を和らげる効果も期待できるため、のぼせてイライラする、口が渇いて落ち着かない、興奮して眠れないといった症状にも用いられます。

黄連解毒湯と黄連湯の違い

黄連解毒湯と黄連湯は、名前は似ていますが、構成生薬は大きく異なります。共通しているのは黄連のみです。むしろ黄連湯は、半夏瀉心湯（ハンゲシャシントウ）に構成生薬が近いと言えます。漢方薬は、患者の状態に合わせて生薬の量を調整したり、加えたりすることがあります。

温清飲との関係

温清飲（ウンセイイン）は、四物湯（シモツトウ）と黄連解毒湯を組み合わせた漢方薬です。四物湯は体を温め、血を補う作用があり、黄連解毒湯は体を冷まして熱を取り除く作用があります。一見、効果が打ち消し合うように思えますが、温清飲は、四物湯で血を補い、黄連解毒湯で血の熱を取り除くことで、のぼせを改善し、止血作用を発揮すると考えられています。

参考資料

* 日本薬学会（編集）『薬学生・薬剤師のための知っておきたい生薬100 ―含 漢方処方―』 東京化学同人 2004年

もう一度検索