四物湯

四物湯（しもつとう）

四物湯は、漢方医学において補血を目的とした代表的な方剤です。体力虚弱で、冷え症、皮膚の乾燥、顔色の悪さ、貧血などの症状がある方に適しています。月経不順や更年期障害といった女性特有の症状、しもやけ、しみ、産後の疲労回復などにも用いられます。

概要

四物湯は『太平恵民和剤局方』が出典の第2類医薬品で、補気剤の一種です。補陰・補血の基本処方とされ、血虚を改善するために他の漢方薬と組み合わせて用いられることが一般的です。単独で使用されることは比較的少ないです。

適応

以下の症状に効果が期待できます。

月経不順
月経異常
更年期障害
血の道症
冷え症
しもやけ
しみ
貧血
産後あるいは流産後の疲労回復

ただし、体力虚弱で、冷え症があり、皮膚が乾燥し、色つやの悪い体質で、かつ胃腸障害がないことが条件となります。

組成

四物湯は、以下の4種類の生薬で構成されています。

当帰（とうき）：3.0g
川芎（せんきゅう）：3.0g
芍薬（しゃくやく）：3.0g
熟地黄（じゅくじおう）：3.0g

これらの生薬が相互に作用し、血を補い、血行を促進する効果を発揮します。

関連処方

四物湯は、他の漢方薬と組み合わせて、より複雑な症状に対応するために用いられることがあります。代表的な関連処方としては、以下のようなものがあります。

温清飲（うんせいいん）：四物湯＋黄連解毒湯（黄連、黄芩、黄柏、山梔子）
芎帰膠艾湯（きゅうききょうがいとう）：四物湯＋阿膠＋艾葉＋甘草
七物降下湯（しちもつこうかとう）：四物湯＋黄耆＋黄柏＋釣藤鈎
十全大補湯（じゅうぜんたいほとう）：四物湯＋四君子湯＋黄耆＋桂皮
当帰飲子（とうきいんし）：四物湯＋黄耆＋防風＋荊芥＋疾藜子＋何首烏＋甘草
連珠飲（れんじゅいん）：四物湯＋苓桂朮甘湯
猪苓湯四物湯（ちょれいとうしもつとう）：四物湯＋猪苓湯（猪苓、沢瀉、茯苓、阿膠、滑石）
四物血行散（しもつけっこうさん）：四物湯＋茯苓＋白朮

これらの合方は、四物湯の基本的な効果に加え、それぞれの合方に含まれる生薬の特性に応じた効果が期待できます。

市販薬

四物湯は、ツムラ、クラシエホールディングス、三和生薬株式会社、松浦薬業株式会社、一元製薬、ジェーピーエス製薬株式会社、小太郎漢方製薬などのメーカーから販売されています。

注意点

四物湯は、体質や症状によっては合わない場合があります。服用前に医師または薬剤師に相談することが重要です。

特に、胃腸が弱い方や、下痢をしやすい方は、慎重に服用する必要があります。

その他

精神科医の神田橋條治氏は、フラッシュバック治療に桂枝加芍薬湯と四物湯を処方したことで知られています。

外部リンク

高齢者の貧血に対する四物湯の効果
ツムラ四物湯エキス顆粒(医療用)
田原英一, 後藤雄輔, 吉永亮, 井上博喜, 矢野博美「四物湯を含む処方が精神症状を改善した6症例」『日本東洋医学雑誌』第71巻第2号、日本東洋医学会、2020年、94-101頁
頻用処方解説 四物湯①漢方トゥデイ
頻用処方解説 四物湯②漢方トゥデイ

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