黄金のスペクトル

『黄金のスペクトル』（原題：Point of Entry）は、英国のヘヴィメタルバンド、ジューダス・プリーストが1981年に発表した7作目のスタジオ・アルバムである。

解説

前作『ブリティッシュ・スティール』で国際的な成功を収めたバンドが、さらなる飛躍、特に巨大なアメリカ市場での浸透を目指して制作された。その戦略に基づき、従来の重厚さよりも、より簡潔で覚えやすいメロディを持つ楽曲が多く収録されているのが本作の特徴と言える。

この音楽性の変化は、バンドの長年のファン、特にイギリスや欧州のリスナーからは戸惑いを持って受け止められた。「ジューダス・プリーストらしくない、不自然にポップになった」という批判的な声も多く聞かれた。肝心のアメリカ市場においても、期待されたほどの大きな成功には繋がらなかったのが実情である。当時の音楽メディアにおける評価も厳しく、本国イギリスの音楽新聞『レコード・ミラー』の1981年3月7日付のレビューでは、「完全なる失敗の一歩手前」とまで評されるなど、厳しい論評も見られた。

商業的な面では、イギリス本国では、前作『ブリティッシュ・スティール』のような大成功を収めることはできなかった。シングルカットされた「ドント・ゴー」は全英シングルチャートで最高51位、「ホット・ロッキン」は最高60位にとどまった。一方、アメリカにおいては、アルバム自体はBillboard 200で2作連続となるトップ40入りを果たし、一定の支持を示した。さらに、シングル「嵐のハイウェイ」は、『ビルボード』誌のトップ・トラックス（現在のメインストリーム・ロック・チャート）で10位にランクインした。これはジューダス・プリーストの楽曲が初めて『ビルボード』誌の主要なチャートに登場した記念すべき出来事となった。

本作収録曲からは「嵐のハイウェイ」「ドント・ゴー」「ホット・ロッキン」の3曲でミュージック・ビデオが制作された。アルバムのジャケットデザインは、イギリス盤とアメリカ盤で異なっており、日本国内盤はアメリカ盤のデザインを踏襲している。後年、著名なミュージシャンであるケリー・キング（スレイヤーのギタリスト）が、熱心なジューダス・プリーストのファンであったにも関わらず、本作の内容には失望し、購入したレコードを自宅の庭で焼却してしまったというエピソードを明かしている。

収録曲

本作には以下の楽曲が収録されている。特記なきものはロブ・ハルフォード、K. K. ダウニング、グレン・ティプトンの共作。

嵐のハイウェイ - Heading Out to the Highway - 3:46
ドント・ゴー - Don't Go - 3:18
ホット・ロッキン - Hot Rockin' - 3:16
ターニング・サークルズ - Turning Circles - 3:41
雷鳴 - Desert Plains - 4:35
黄金のスペクトル - Solar Angels - 4:03
ユー・セイ・イエス - You Say Yes - 3:29
オール・ザ・ウェイ - All the Way - 3:42
トラブルシューター - Troubleshooter - 4:00
ロックンロール・オン・ザ・ラン - On the Run - 3:44

2001年リマスターCDには、以下のボーナス・トラックが追加された。

サンダー・ロード - Thunder Road (Rob Halford, Glenn Tipton) - 5:11
雷鳴 (ライヴ) - Desert Plains (live) - 5:06

カヴァー

収録曲の「雷鳴 (Desert Plains)」は、ジャーマンメタルのバンド、アイアン・セイヴィアーが1999年にリリースした企画アルバム『Interlude』でカヴァーしている。

参加ミュージシャン

本作に参加したジューダス・プリーストのメンバーは以下の通り。

ロブ・ハルフォード：ボーカル
K. K. ダウニング：リードギター
グレン・ティプトン：リードギター
イアン・ヒル：ベース
デイヴ・ホーランド：ドラムス

制作スタッフ

プロデュース - ジューダス・プリースト＆トム・アロム
エンジニア - ルイス・オースティン
ミックス - トム・アロム（Startling Studios. London）
マスタリング - レイ・スタッフ（Trident Studios）
レコーディング・スタジオ - イビザ・サウンド・スタジオ

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