ブリティッシュ・スティール

ジューダス・プリースト『ブリティッシュ・スティール』

『ブリティッシュ・スティール』（British Steel）は、1980年にジューダス・プリーストが発表した6作目のスタジオ・アルバムです。本作は、バンドの音楽性を新たな段階へと押し上げた重要な作品として、世界中のメタルファンから愛されています。

解説

本作では、元トラピーズのデイヴ・ホーランドがドラマーとして加入し、1980年代を通じてバンドを支えることになります。レコーディングは、バークシャーのアスコットにあるリンゴ・スター所有のスタジオで行われました。かつてジョン・レノンが住んでいた場所でもあり、メンバーはジョンやリンゴが生活していた風景に感動したと言われています。

レコーディング開始時、十分な数の新曲が揃っていなかったため、「ブレイキング・ザ・ロウ」「リヴィング・アフター・ミッドナイト」「ザ・レイジ」といった代表曲は、レコーディング中に制作されました。楽曲はシンプルな構成で、バラードタイプの曲は収録されていません。

セールスと評価

『ブリティッシュ・スティール』は、商業的にも大きな成功を収めました。本国イギリスでは初のトップ10入りを果たし、最高4位に達しました。「リヴィング・アフター・ミッドナイト」（全英12位）、「ブレイキング・ザ・ロウ」（同12位）、「ユナイテッド」（同26位）といったシングル・ヒットも生まれています。アメリカのBillboard 200でも初のトップ40入り（最高34位）を果たし、アメリカでの人気を確立するきっかけとなりました。

イギリス盤とアメリカ盤では曲順が異なり、USオリジナル盤では「ブレイキング・ザ・ロウ」がA面1曲目、「リヴィング・アフター・ミッドナイト」がB面1曲目に配置されていました。日本盤LPやCDもかつてはアメリカ盤に準じていましたが、2001年のリマスター以降は、イギリス盤の曲順による9曲にボーナス・トラック2曲を追加したフォーマットに統一されています。

楽曲について

「メタル・ゴッズ」は、人間が機械に支配されるという内容の歌詞で、やがてバンド自体の愛称となりました。この曲の録音では、楽器以外の音（アンプのコード、ビリヤードのキュー、食器）も使用されています。「ブレイキング・ザ・ロウ」は、VH1の「40 Greatest Metal Songs」で第40位、「Top 100 Hard Rock Songs」で第12位にランクインしています。

2001年には、本作の制作秘話に関するメンバーや関係者の証言、ライブ映像などを収録したDVD『ブリティッシュ・スティール』が発表されました。

収録曲

全曲ともロブ・ハルフォード、K・K・ダウニング、グレン・ティプトンの共作です。

1. ラピッド・ファイア - Rapid Fire
2. メタル・ゴッズ - Metal Gods
3. ブレイキング・ザ・ロウ - Breaking the Law
4. グラインダー - Grinder
5. ユナイテッド - United
6. オールド・トゥ・ビー・ワイズ - You Don't Have to Be Old to Be Wise
7. リヴィング・アフター・ミッドナイト - Living After Midnight
8. ザ・レイジ - The Rage
9. スティーラー - Steeler

2001年リマスターCDボーナス・トラック

10. レッド、ホワイト・アンド・ブルー - Red, White & Blue
11. グラインダー (ライヴ) - Grinder

USオリジナル盤曲順

1. Breaking the Law
2. Rapid Fire
3. Metal Gods
4. Grinder
5. United
6. Living After Midnight
7. You Don't Have to Be Old to Be Wise
8. The Rage
9. Steeler

カバー

「ブレイキング・ザ・ロウ」は、ハンマーフォールやファイアーウインドによってカバーされています。
「メタル・ゴッズ」は、プライマル・フィアによってカバーされています。
「リヴィング・アフター・ミッドナイト」は、ザ・ドナスによってカバーされています。

参加ミュージシャン

ロブ・ハルフォード：ボーカル
K・K・ダウニング：リードギター
グレン・ティプトン：リードギター
イアン・ヒル：ベース
デイヴ・ホーランド：ドラムス

『ブリティッシュ・スティール』は、ジューダス・プリーストの代表作としてだけでなく、ヘヴィメタルの歴史においても重要な作品として評価されています。

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