黄鉄鉱

黄鉄鉱 (Pyrite)

黄鉄鉱（おうてっこう、英: pyrite）は、硫化鉄の一種で、化学式はFeS2で表されます。鉄と硫黄から成り、理想的な比率は硫黄53.4%、鉄46.6%です。等軸晶系の結晶を持ち、主に六面体や八面体、時には五角十二面体の形状をとります。この鉱物の名称は、ギリシャ語の「火」を意味する「pyr」に由来し、叩くと火花を散らす性質から名付けられました。

黄鉄鉱は真鍮色をしており、金属的な光沢がありますが、条痕色は緑黒色です。外見が金と似ているため、「愚者の黄金」とも呼ばれ、生前に鉱物愛好家によってその美しさが高く評価されてきました。モース硬度は約6-6.5であり、比重は4.95から5.10と比較的高いため、鉄鉱石として扱われることもありましたが、湿気による脆化が問題です。風化の結果、褐鉄鉱などに変化することが多く、その際には黄鉄鉱の結晶形を残す仮晶が「武石」または「升石」として知られています。

用途と加工法

黄鉄鉱はかつては硫酸の原料として広く利用されていましたが、現在では石油から抽出した硫黄を使った製造方法が主流となりました。この変遷により、工業的価値は下がっています。黄鉄鉱は加熱すると亜硫酸ガスを発し、硫黄を完全に除去することが難しいため、製鉄の材料としては不適格とされています。

環境への影響

過去には岡山県の柵原鉱山などで硫酸の原料として採掘されていましたが、地下水と反応し生成される硫酸が河川のpHを変化させ、鉄の酸化に伴う汚染を引き起こすこともありました。特に松尾鉱山はそのような事例があったことで知られています。

半導体としての活用

黄鉄鉱は、方鉛鉱などと共に半導体性を持ち、過去には鉱石ラジオなどに利用されてきました。2009年以降、高性能の薄膜太陽電池の材料として注目を浴び、工業的な再評価が進行しています。この太陽電池は低コストで高いエネルギー変換効率を有し、放射線耐性にも優れています。また、自己回復する特性も持ち合わせており、宇宙線ダメージからの自己修復が確認され、長寿命化することが期待されています。これに関する成果は2023年にプエルトリコで開催されたIEEE PVSCで発表され、翌年のシアトルでの会議でも確認されるなど、実用化に向けた動きが加速しています。

化石としての黄鉄鉱

一部の化石は黄鉄鉱に置換されており、例えばアンモナイトは「アンモナイトパイライト」として知られ、アクセサリーとして人気があります。また、イリノイ州の古生代の頁岩から得られる「パイライト・サン」は、特異な形状から愛好家に収集されています。成因についての明確な定説はないものの、いくつかの説が存在しています。

まとめ

黄鉄鉱はその独特な外観と性質から、かつては重要な鉱物資源でしたが、現在は新しい用途として太陽電池の材料や半導体としての可能性が注目されています。環境への影響やその他の用途にも配慮しながら、今後の研究が進むことが期待されています。

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