黄龍の村

『黄龍の村』（こうりゅうのむら、英題：YELLOW DRAGON'S VILLAGE）は、気鋭の映画監督、阪元裕吾がメガホンをとった日本の長編映画です。2021年9月24日に劇場公開され、その衝撃的な内容で話題を呼びました。

概要

本作は、ホラー映画に特化した動画配信サービス「OSOREZONE」が初めて製作に出資した意欲作として誕生しました。監督の阪元裕吾自身は、この作品をキャリアにおける重要な転換期に位置づけており、「青春映画のような勢いとノリで、観客には見ていて楽しく、そして爽快な気分になってもらいたい」と語っています。

物語の雰囲気は、古典的な日本の村ホラーを思わせる導入でありながら、その常識を覆す展開が待ち受けています。国内外の映画祭でも注目され、テキサスファンタスティック・フェストやサン・セバスチャンホラー＆ファンタジー映画祭といった名だたる映画祭に正式招待されました。映画ライターからは、「あらすじだけ聞けば王道そのものの村ホラーだが、決してタダモノではない」といった高い評価が寄せられています。主題歌には、オルタナティブ・ロックシーンで注目を集めるバンド、Helsinki Lambda Clubによる楽曲「Shrimp Salad Sandwich」が起用され、作品の世界観を彩っています。

ストーリー

物語は、気ままなキャンプ旅行へと向かう8人の若者グループから始まります。しかし、山道を進む途中で車のタイヤがパンクするというアクシデントに見舞われ、彼らは助けを求めて近くの山間に位置する閉鎖的な集落「龍切村」に迷い込みます。

村で出会った老人、新次郎の家に泊めてもらうことになった若者たちでしたが、翌朝、村の恐ろしい真実が露わになります。朝食の最中、若者の一人である孝則が突然、村の女に刺殺されるのです。他の村人たちと共に現れた新次郎は、猟銃を突きつけながら彼らに「君たちは『対象』になった」「これは村の決まりだ」と冷酷に告げます。村の神社では、孝則の遺体が儀式と称して焼かれ、「オビンタワラ様」と呼ばれる存在に捧げられます。次に「料理」される対象として指名されたなごみは必死に抵抗し、新次郎と揉み合う中で銃が暴発、その流れ弾で仲間の健人が倒れてしまいます。なごみは銃を奪って逃走を図りますが、転倒した際に銃が暴発し命を落とします。残された若者たちも村から脱出しようとしますが、村人たちは彼らを容赦なく追跡し始めます。

逃走中、優希は目の前でうららを射殺され、激しい怒りと復讐心に燃え上がりますが、その直後に彼自身も撃ち殺されてしまいます。絶体絶命の状況に見えたその時、村の神社では異変が起きていました。倒れたはずの健人と仲間の睦夫が立ち上がり、新次郎を含む数名の村人を銃撃し、制圧していたのです。胸を撃たれ瀕死の新次郎に対し、健人は自身の祖母がかつてこの村の「儀式」の犠牲になったこと、そしてその復讐のために今日この村に来たことを明かします。告白を終えた直後、新次郎は息絶えます。一方、睦夫の妹である真琴と、仲間である啓作もまた、それぞれ単独で村人たちを次々と始末していました。

ここで、観客は衝撃の事実を知ります。健人、睦夫、真琴、啓作の4人は、遊びのキャンプに見せかけて、この村への復讐のために長年訓練を積み重ねてきたプロフェッショナルだったのです。さらに、彼らは以前から村に間諜、奈穂美を潜入させていました。健人は無線機で「村人を全員殺す」と宣言し、村人たちも激しく抗戦の構えを見せます。

復讐者となった4人は、圧倒的な戦闘能力で村人たちを次々と屠っていきます。田村弘のような日本刀の使い手や、千代のような中国拳法の達人といった強力な村人相手には苦戦を強いられる場面もありましたが、最終的には村人全員を返り討ちにします。潜入していた奈穂美とも合流した一行は、村長を待ち伏せ、手榴弾で爆殺するという冷酷な方法で止めを刺し、復讐を完遂して村を後にします。

しかし、帰路の道中で、儀式の対象として閉じ込められていた「オビンタワラ様」本人と遭遇します。最後の強敵との壮絶な戦闘の末、5人全員が協力し、最後は健人がとどめを刺して勝利を収めます。長年の悲願であった復讐を遂げた彼らは、その夜、祝杯をあげるのでした。

エピローグでは、なんと生きていたオビンタワラ様を助手として従え、健人が「便利屋」を開業している姿が描かれ、物語は幕を閉じます。

特徴

『黄龍の村』は、従来の村ホラーの定石を大きく覆す、大胆で予測不能な展開が最大の魅力です。閉鎖的な村の因習による恐怖を描く序盤から一転、訓練された主人公たちが村人たちを殲滅していくバイオレンスアクションへと様相を変化させます。グロテスクな描写や壮絶なアクションシーンが連続し、観る者に一切の油断も許さないジェットコースターのようなエンターテイメント作品となっています。単なる被害者であったはずの若者たちが、実は復讐者として計画的に乗り込んできたというサプライズは、この作品を唯一無二のものにしています。

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