黎愍帝

黎愍帝の生涯と治世

黎愍帝（れいびんてい）、またはレ・マン・デは、後黎朝の第29代、そして最後の皇帝です。彼の本名は黎 維祁（レ・ズイ・キー）で、治世においては昭統帝（しょうとうてい）の名で知られています。

幼少期と皇太子時代

黎愍帝は、皇太子黎維禕の長男として生まれ、母親は阮氏玉素という継室でした。幼い頃から皇太子として育てられる予定でしたが、景興30年（1769年）、父が権力を失い、彼自身も廃太子となり、庶民としての生活を余儀なくされました。黎維祁は、父や弟たちとともに獄中に閉じ込められました。

反乱と復権の足跡

1771年、黎維禕の支持者たちが反乱を起こし、彼を救出しようとしましたが、計画は失敗に終わり、黎維禕は鄭森の手によって命を落としました。この悲劇は、黎愍帝にとって権力を取り戻すきっかけとなる出来事でした。

1782年、鄭森が死去し、後の三府軍の乱が勃発すると、黎維祁は仲間たちに救出され、祖父の顕宗から直接皇位を継承することとなります。しかし、彼の治世はそこから始まるさまざまな権力闘争によって揺らぐことになります。

昭統の治世

1786年、黎維祁は即位し、名を黎維祁と改めました。彼は西山軍に対して警戒を強め、様々な策略を巡らせましたが、次第に国家運営の難しさに直面します。大きな課題は、権力を握ろうとする国内外の勢力による圧力でした。

権力の交錯

黎愍帝は初め、旧臣を重用しつつ権力を維持しようと試みましたが、内政における権力の分散は彼にとって深刻な悩みの種となります。特に鄭槰と呼ばれる武将が台頭してくると、徐々に彼の権力は脅かされます。これに対抗するため、密かに毒殺の計画を立てるも、未遂に終わります。

清軍の介入と運命

1788年、清軍が安南に進軍し、黎愍帝は彼らの力を借りて西山朝と戦うことになります。この救済活動は、黎愍帝にとって一時的な権力回復の手段となりますが、彼自身は名ばかりの皇帝になってしまいます。

絶望と逃亡

清軍の指導者たちは次第に数の力を失い、黎愍帝は次第に孤立していきます。そして、西山軍との戦いに敗れた後、彼は清の保護下に身を寄せざるを得なくなりました。彼の権力は実質的に失われ、逃亡を余儀なくされます。

最期とその後

1792年、黎維祁は北京に移住することになり、清朝に仕官する道を選びますが、復国の志は果たせませんでした。彼は1793年に28歳で逝去し、後に皇帝としての礼を持って葬られました。

彼の死後、後黎朝の遺臣たちは新政権への復帰を願うも、実現には至りませんでした。晩年の権力闘争と戦乱の中で、黎愍帝は自らの国を取り戻すことができなかったのです。

このように、黎愍帝の生涯は権力闘争と悲劇に満ちたものと言えるでしょう。彼の治世は、ベトナムの歴史における変革の時代の一部であり、その影響は現在にまで続いています。

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