黒ボク土

黒ボク土とは

黒ボク土（くろボクど）は、日本特有の土壌で、英語ではAndosolまたはKuroboku soilと呼ばれています。その名前は、土の色や触感に由来しています。乾燥した土を触った時に感じるボクボクした質感から、農民たちが古くからこのように呼んでいました。黒ボク土は、通常「黒土」とも言われますが、日本以外の黒土と比べると特性が異なります。また、地域によっては「黒ノッポ」、「黒フスマ」、「黒ニガ」といった異なる呼称が使われることもあります。

形成過程と特性

黒ボク土は火山灰土と腐植が主成分となっています。表層には多くの腐植が混ざっており、そのために黒色または黒褐色を呈し、下層は褐色となります。この土壌は、火山の周辺地域の台地や平地でよく見られますが、一部は火山灰に由来しないものも存在し、火山から離れた場所でも見かけることがあります。

土壌が形成される過程では、火山の噴火によって地表に積もった火山灰の上に植物が生い茂ります。植物の枯死と分解によって腐植が生成され、時間をかけて黒ボク土が作られます。火山灰からなるローム層は、古代の冷涼な気候の下で形成されたため、分解が進まずに黒ボク土とは異なる性質を持っています。

黒ボク土の特徴として、火山灰に含まれる活性アルミナと有機物が結合することがあります。このため、日本の他の土壌と比較して有機物の含有量が非常に高く、団粒構造を形成して植物の育成に適した環境を提供します。また、保水性や透水性にも優れており、耕作が容易だという利点があります。

農業における課題

一見すると耕作に適した土壌と思えますが、実際にはいくつかの問題点も抱えています。特に、活性アルミナの影響によりリン酸の吸収力が高く、土壌中のリン酸が不足しがちです。このため、施肥を行わないと土壌が劣化しやすくなります。鎌倉時代から室町時代にかけて、刈敷や厩肥、人糞肥料、金肥などが使用され、耕作可能性は高まりましたが、これらは全体的に絶対的な量が少なく、特定の地域に偏った施用は窒素過多を引き起こす場合も見られます。これにより、化学肥料が普及する以前は生産性が低い状況が続きました。

現代においては、適切な施肥を行うことで水稲や畑作も可能になります。しかし、湿田の管理は夏季の酸素欠乏やアルカリ土壌化に対応する必要があり、乾田では水分不足による酸性化が進行します。これにより、他の土壌とは異なる特別な管理が求められます。例えば、さつまいもはリン酸をあまり必要としないため、江戸中期以降は救荒作物として重宝されています。

黒ボク土の分布

国立研究開発法人農研機構によると、黒ボク土は日本の国土の約31%を占め、特に北海道、東北、関東、九州の火山地域に多く見られます。また、農地の約47%を覆っています。一方で、土壌学者の三土正則によると、黒ボク土の面積は約550万ヘクタールで、日本全体の約15%に及ぶとされています。いずれにしても、黒ボク土は日本で非常に一般的な土壌ですが、世界規模で見るととても希少です。農研機構によると、全陸地の1%未満、三土正則によると0.8%弱の土壌が黒ボク土です。国際的には、カムチャツカ半島やニュージーランド北島などの火山がある地域でも見られます。

黒ボク土の分類

黒ボク土は発達程度や生成環境に応じて、以下の6つの土壌群に分類されます。
1. 未熟黒ボク土（D1） - 発達が遅れた土壌。
2. グライ黒ボク土（D2） - 地下水位が高く、水に飽和した層が短い。
3. 多湿黒ボク土（D3） - 湿気の多い土壌。
4. 褐色黒ボク土（D4） - 有機物が多いが黒くない土壌。
5. 非アロフェン質黒ボク土（D5） - 結晶性粘土を含む土壌で、強酸性。
6. アロフェン質黒ボク土（D6） - アロフェンが主体でリン酸保持能力が高い。

国際的な呼称

黒ボク土は国際的には、FAOの土壌分類で『Andosols』、USDAでは『Andisols』と分類されています。これらの名称は、戦後にアメリカの土壌学者が日本の黒ボク土の特異性を評価したことに由来しています。

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