黒印

黒印（こくいん）とは

黒印とは、黒色の墨を用いて押印された印章のことを指します。歴史的には、公文書には朱印を用いるのが原則とされていましたが、黒印は写経や典籍に押す蔵書印など、例外的な用途で使用されていました。

黒印の歴史

古代: 公文書には朱印が用いられ、黒印は写経や典籍の蔵書印といった限定的な用途に限られていました。
鎌倉時代: 花押を模して黒印が用いられる例が出始めました。しかし、この時期にはまだ一般的ではありませんでした。
戦国時代: 黒印状が広く用いられるようになります。戦国大名は、朱印と黒印を文書の内容や重要度によって使い分けをしていましたが、その基準は押印者によって異なりました。朱印が正式な文書に用いられるのに対し、黒印は略式・薄礼の文書に使われる傾向がありました。
江戸時代: 朱印は武士などの支配階級の特権とされ、庶民は黒印を使用しました。庶民の間では、黒印が印章として広く使われるようになりました。
明治時代以降: 朱印の使用が解禁され、黒印は略印として用いられるようになりました。現在では、黒印は日常的な書類や認印として使われています。

黒印と朱印の関係

黒印は、歴史的に朱印よりも略式なものとして扱われてきました。戦国時代には、大名が文書の内容によって朱印と黒印を使い分けていたものの、その基準は一定ではありませんでした。朱印は格式の高い文書に用いられ、黒印は略式の文書や内々の文書に使用される傾向がありました。

黒印状と黒印地

黒印状とは、黒印が押された文書のことを指します。黒印状を交付して土地を寄進、または安堵した土地を黒印地と呼びます。黒印は、朱印に比べて略式の印であるため、黒印地は朱印地よりも格式が低いとみなされていました。

まとめ

黒印は、その歴史の中で、朱印の略式として、あるいは庶民の間で広く用いられてきました。時代によってその使われ方は変化しましたが、現代でも、略印として日常生活で使われています。黒印の歴史を理解することは、日本の歴史や文化の一面を理解する上で重要です。

参考文献

荻野三七郎「黒印」（『国史大辞典 5』吉川弘文館、1985年）ISBN 978-4-642-00505-0
荻野三七郎「黒印」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13103-1

関連項目

朱印

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