黒澤信彦

黒澤 信彦

日本の篤農家であり、農業生産法人株式会社黒澤ファームの代表取締役を務める黒澤信彦氏は、山形県南陽市池黒に伝わる約500年の歴史を持つ農家の二十一代目として、1958年11月16日に誕生しました。代々受け継がれる「生きている土作りと息づく稲作り」という家訓を自身の農業哲学とし、地元の豊かな土地で米作りに励んでいます。

経歴と経営の歩み

山形県立置賜農業高等学校を卒業後、一度は農業を離れ、航空自衛隊入間基地に入隊しましたが、やがて故郷に戻り、1986年に家業である農業を継ぐことを決意しました。就農後は、伝統的な手法に留まらず、常に新しい取り組みを模索します。

1995年には、志を同じくする地域の農家と共に「こめ工房南陽アスク」（青木氏、鈴木氏、黒澤氏の頭文字に由来）を結成。連携して高品質な米作りと販路開拓に取り組み始めます。1998年には、収穫した米の品質を維持するために低温倉庫を建設し、徹底した品質管理体制を確立しました。この品質へのこだわりが、その後の国内外での評価に繋がっていきます。

経営規模の拡大と販路の多様化を図る中で、2008年には海外市場への挑戦としてコメ輸出を開始。さらに、地域農業の振興と情報交換を目的として、2009年には山形県の著名な農家らが集まる「おきたま七福会」のメンバーとしても活動を開始しました。

有機農業と品質へのこだわり

黒澤氏の農業における最大の特長は、家訓にも通じる「土作り」への深いこだわりです。自然循環型の有機農業を推進し、化学肥料や農薬の使用を極力抑えた、環境にも配慮した米作りを実践しています。こうした長年の取り組みが評価され、2018年6月には「やまがた有機農業の匠」に認定されました。

また、品質管理においては、国際的な認証基準にも対応しています。2017年4月には、農業生産工程管理に関する国際認証基準である「JGAPアドバンス」を取得しました。これは、コメ分野において、もみ、玄米、精米の全てを合わせた認証としては全国で初めての快挙であり、黒澤ファームの生産管理レベルの高さを示すものです。

黒澤氏は、自身が生産する米を「夕鶴郷米」として地域ブランド化することにも尽力しています。このブランドを通じて、品質の高さはもちろん、生産地の風土や文化も伝え、消費者の信頼を得るための活動を積極的に行っています。

受賞歴と評価

黒澤氏が丹精込めて育てた米は、国内外の様々な品評会で高く評価されています。

米・食味分析鑑定コンクール国際大会: この権威あるコンクールでは、長年にわたり入賞を続け、特に2000年代から2010年代にかけて合計6年連続で受賞するという優れた実績を残しています。最高賞である金賞を4回（2004年、2005年、2013年、2014年）、それに次ぐ特別優秀賞を12回（2000年、2002年、2003年、2006年、2009年、2010年、2011年、2012年）受賞しています。
『あなたが選ぶ日本一おいしい米コンテストin 庄内町』: このコンテストでも、2009年に入賞を果たしています。
* 全国優良経営体表彰: 農業経営における革新的な取り組みも高く評価されており、2018年度の「平成30年度 全国優良経営体表彰」においては、販売革新部門で最高の栄誉である農林水産大臣賞を受賞しました。

これらの受賞は、黒澤氏の品質への揺るぎないこだわりと、経営の革新性が広く認められている証と言えます。

地域貢献と未来への継承

農業活動に加え、黒澤氏は地域社会への貢献にも積極的です。山形県農業法人協会の理事や南陽市体育協会の理事を務めるなど、様々な立場で地域の発展に尽力しています。2017年4月には、息子である黒澤拓真氏が就農し、代々受け継がれてきた農業技術と哲学、そして革新的な経営手法は次の世代へと着実に引き継がれています。

黒澤信彦氏は、伝統を重んじながらも常に新しい技術や経営手法を取り入れ、高品質な米作りと地域ブランドの確立、さらには国内外への販路開拓を通じて、日本の農業の可能性を切り拓く篤農家として、その存在感を示しています。

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