黒田光之

黒田光之：文治を重んじた福岡藩主

黒田光之（くろだ みつゆき）は、江戸時代前期の筑前福岡藩の第3代藩主です。寛永5年（1628年）に第2代藩主・黒田忠之の長男として生まれ、承応3年（1654年）に家督を継ぎました。

藩政改革と文化奨励

光之は、父の代から始まった藩の財政難を打開するため、徹底した倹約令を出し、藩政改革に取り組みました。武断政治から文治政治へと転換し、儒学者の貝原益軒を再び召し抱え、『黒田家譜』の編纂を命じるなど、文化事業を奨励しました。また、保守的な重臣を遠ざけ、鎌田昌勝や立花重根といった新たな人材を登用しました。居館として福岡城三の丸に下の屋敷を造営しています。

後継者争いと藩の混乱

延宝5年（1677年）、光之は嫡男・綱之を廃嫡し、四男の長寛（後の綱政）を後継者に定めたことが、藩内に大きな混乱を引き起こしました。この後継者争いは家老の処分にまで発展し、藩政に大きな影響を与えました。元禄元年（1688年）に綱政へ家督を譲ったものの、晩年には綱政との間にも対立が生じています。

その他の事績

光之の時代には、御用商人・伊藤小左衛門による朝鮮との密貿易が発覚し、幕府の嫌疑を避けるために小左衛門一家が処分されるという事件がありました。この事件は、近松門左衛門によって浄瑠璃や歌舞伎の題材として脚色され、後世に伝えられています。また、荒廃していた太宰府の観世音寺と戒壇院を豪商に命じて再興させました。日本三大銘菓の一つである鶏卵素麺は、光之に献上されたことで黒田藩御用菓子となり、全国に広まりました。

宝永4年（1707年）に福岡で死去、享年80。法号は江竜院淳山宗真。

人物像

光之は、父とは異なり文治を重んじ、文化事業を奨励した藩主でした。しかし、後継者争いに端を発するお家騒動は、藩政に大きな影響を与え、その評価を複雑なものにしています。麻布に母・坪坂氏を弔う天真寺を建立、自身も高野山真言宗を信仰し、廟は空海廟に一番近い場所にあります。

関連人物

黒田忠之（父、第2代福岡藩主）
貝原益軒（儒学者）
伊藤小左衛門（御用商人）
黒田綱政（四男、第4代福岡藩主）

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