黒田騒動

黒田騒動の概要

黒田騒動（くろだそうどう）は、江戸時代前期に福岡藩内で起こった家族間の争いを指します。この出来事は栗山大膳事件（くりやまだいぜんじけん）とも呼ばれ、伊達騒動や仙石騒動と並んで、最も著名なお家騒動の一つとされています。特筆すべきは、この騒動が他の御家騒動と異なり、死者を出さずに収束した点です。

背景と経過

騒動の発端は、黒田長政が自らの跡取りに関して不安を抱いたことから始まりました。彼は長男・忠之の性格に対し懸念を抱き、三男の長興に家督を譲る決断をしました。このため、忠之には厳しい選択肢が与えられ、彼は非常に不満を抱きました。長政は忠之に対して2000石の田地で百姓となるか、1万両を持って関西で商人になるか、または1000石で寺を建立する道を示しました。

この状況に対し、忠之の後見役である栗山大膳は、忠之に切腹を勧めるなどの極端な対応をしました。結果として、忠之の支持者である藩士たちが団結し、長政に対して廃嫡を撤回するよう圧力をかける血判状を提出します。この事態を深刻に受け止めた長政は、彼らの嘆願を受け入れ固い約束をしました。しかし、その後長政は死去しました。

大膳は忠之に向けて諌めの書状を送りますが、その内容はあまりにも幼稚であったため、忠之はこれに腹を立て、大膳との距離を置くようになります。その結果、忠之が藩主に就任した寛永元年（1624年）以降、藩内には緊張が高まり、豪華な大船「鳳凰丸」を建造したり、200人の足軽を新たに雇ったりするなどの行動が反発を招きました。このような行為は、軍縮の時代に逆行する暴政として藩からの非難を浴びることとなります。

騒動の顛末

寛永9年（1632年）には、大膳が忠之が幕府を転覆させようと計画していると訴えを起こす事態に発展します。藩側は大膳を狂人として非難しますが、最終的に寛永10年（1633年）、将軍の裁定によって忠之の主張が認められることとなり、約10年にわたる騒動は収束しました。その後、大膳は責任を取って陸奥盛岡藩へ預けられ、忠之の側近である倉八十太夫は高野山に追放されました。倉八は島原の乱で戦いに参加したものの特に戦功を挙げることはできず、黒田家に復帰することは叶いませんでした。一方で、栗山大膳は黒田家の兜を持参し盛岡藩に預けられましたが、その兜は現在ももりおか歴史文化館に保管されています。

文化への影響

黒田騒動はその後、江戸時代中期に多くの歌舞伎作品や小説に影響を与えました。初めて取り上げたのは瀬川如皐による『御伽譚博多新織』で、後に河竹黙阿弥はより発展させた作品を書き上げました。また、森鷗外の作品『栗山大膳』では大膳が黒田家を守るために尽力する様子が描かれています。さらには、映画や様々な書籍にもこの騒動が取り上げられることにより、その影響は現代にまで続いています。

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