黒部亨

黒部亨（くろべ とおる）は、1929年1月27日に鳥取県で生まれた日本の作家です。2014年5月26日に85歳で亡くなるまで、歴史小説を中心に数々の作品を発表しました。彼の作品は、綿密な時代考証に基づいた重厚な筆致が特徴で、多くの読者を魅了しました。

黒部は、鳥取師範学校を卒業後、教育者としての道を歩み始めました。その後、明石市教育委員長を務めるなど、教育行政にも携わりました。しかし、作家としての情熱を抱き続け、1965年に「砂の関係」で群像新人文学賞を受賞し、文壇にデビューしました。

その後、芥川賞候補にも選ばれましたが、受賞には至りませんでした。しかし、その後も精力的に執筆活動を続け、『島のファンタジア』、『十六夜』、『すだまの裔たち』、『谷間のロビンソン』と4度にわたり直木賞候補に選出されるなど、その実力が高く評価されました。また、1971年には『片思慕の竹』でサンデー毎日新人賞を受賞しています。

黒部の作品は、歴史的事実に基づいた歴史小説が中心で、特に兵庫県、とりわけ播磨地方の歴史や人物を題材としたものが多く、地域への深い愛情と造詣が感じられます。代表的な作品には、『遠い海鳴りの日』、『播州歴史散歩 播磨をいろどる人々』、『兵庫県人 日本人国記』などがあり、これらの作品を通して、播磨の歴史と文化を広く伝えています。また、『白鷺の城』や『播磨妖刀伝』、『荒木村重 惜命記』などの歴史小説では、戦国時代の武将たちの生き様を鮮やかに描き出しています。

晩年も創作意欲は衰えず、『幻にて候 古田織部』、『流香譚』、『兵庫人国記』、『松永弾正久秀』、『勇将・後藤又兵衛』など、数多くの作品を発表し続けました。また、『高田屋嘉兵衛』、『明石城をめぐる歴史の旅』など、特定の人物や場所をテーマにした作品も手がけています。さらに、小説だけでなく、『戦国の武将たち ひょうご合戦記』や『騒動の主役たち ひょうごの事件・騒乱記』など、兵庫県の歴史に焦点を当てたノンフィクション作品も執筆しました。

黒部亨は、歴史小説家としてだけでなく、教育者としてもその人生を全うしました。彼の作品は、歴史の奥深さと人間の普遍的な感情を私たちに教えてくれます。没後も、その文学的功績は色褪せることなく、多くの読者に読み継がれています。

主な作品リスト
遠い海鳴りの日（1974年5月、講談社）
播州歴史散歩 播磨をいろどる人々（1974年、創元社歴史散歩シリーズ）
兵庫県人 日本人国記（1976年、新人物往来社）
明石桜（1980年4月、神戸新聞総合出版センター）
白鷺の城（1983年6月、講談社）
播磨妖刀伝（1986年10月、講談社）
荒木村重 惜命記（1988年11月、講談社、「荒木村重 命惜しゅうて候」に改題、PHP文庫）
幻にて候 古田織部（1990年8月、講談社）
流香譚（1992年10月、日本経済新聞社）
兵庫人国記（1994年4月、神戸新聞総合出版センターのじぎく文庫）
松永弾正久秀（1996年、PHP研究所、「松永弾正久秀 梟雄と称された知謀の将」に改題 PHP文庫）
勇将・後藤又兵衛（1997年3月、PHP研究所、「後藤又兵衛　大坂の陣に散った戦国きっての勇将」に改題の上PHP文庫）
戦国の武将たち ひょうご合戦記（1998年7月、神戸新聞総合出版センター）
騒動の主役たち ひょうごの事件・騒乱記（1999年7月、神戸新聞総合出版センター）
高田屋嘉兵衛（2000年4月、神戸新聞総合出版センター）
明石城をめぐる歴史の旅（北村泰生写真、2000年8月、神戸新聞総合出版センタービジュアル・ブックス）
宇喜多直家 秀吉が恐れた希代の謀将（2002年8月、PHP文庫）
荒木又右衛門 「鍵屋の辻の決闘」を演じた伊賀の剣豪（2004年7月、PHP文庫）

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