黒部峡谷鍾乳洞群

黒部峡谷鍾乳洞群

黒部峡谷鍾乳洞群は、富山県黒部市の鐘釣地域に位置する鍾乳洞群です。10ヶ所以上の鍾乳洞が確認されていますが、その多くは総延長が十数メートルと小規模です。最大の洞窟は「サル穴」と呼ばれ、全長は約100メートルに達します。

発見と特徴

これらの鍾乳洞は、1970年と1971年に早稲田大学探検部によって発見・調査されました。現在までに10ヶ所以上が確認されていますが、未発見の洞窟もまだ存在すると考えられています。

黒部峡谷の秘境に位置するため、人の手がほとんど加わっておらず、原生の鍾乳洞の姿を保っています。洞窟内からはニホンザルの化石が多く発掘されており、彼らがこの洞窟を古くから防寒のために利用していたことが示唆されています。

鍾乳洞の周囲には、東鐘釣山と西鐘釣山のタワーカルストや突坂山のドリーネなど、カルスト地形も見られます。

生態と生物化石

この地域は、富山県で唯一、環境省準絶滅危惧種に指定されているホラアナゴマオカチグサの生息地となっています。洞窟内からはニホンザルの化石が多数見つかっており、その周囲からはホラアナゴマオカチグサの死殻、げっ歯類、コウモリなどの小型哺乳類の化石も発見されています。

ニホンザルの洞窟利用

洞窟内では、ニホンザルの化石がまとまって分布していることが確認されています。2010年晩秋には洞窟内に全くなかったニホンザルの糞が、2011年早春には大量に発見されたことから、ニホンザルが真冬の寒さをしのぐために洞窟を利用していると考えられます。洞窟内で見つかったニホンザルの化石の年代測定では、弥生時代のものも確認されており、古くから洞窟が利用されてきたことが判明しています。

鍾乳洞一覧

サル穴：総延長100〜120メートルと、黒部峡谷鍾乳洞群で最大の洞窟です。ニホンザルの化石が多数見られることからこの名前が付けられました。別名として、猿の墓洞、鐘釣洞、鐘釣鍾乳洞群、黒部鐘釣石灰洞などとも呼ばれます。
ホッタ洞：サル穴のすぐ横にある鍾乳洞です。
その他の鍾乳洞：名前が付けられていない洞窟も多数存在します。

地質

黒部峡谷の大部分は花崗岩で構成されていますが、鐘釣地域には特異的に石灰岩層が分布しています。この石灰岩中には、さまざまな規模の鍾乳洞や地下河川が発達しています。

石灰岩層は、東鐘釣山から西鐘釣山を経て、鐘釣駅南方の黒部川左岸斜面へと南北に分布しており、東西の幅は約300メートル、南北の延長は約1.2キロメートルです。面積としては約3平方キロメートルになります。

この地域の石灰岩層の地質年代を特定するための絶滅種の化石は発見されておらず、石灰岩層の正確な地質年代は不明です。

アクセス

黒部峡谷鍾乳洞群がある鐘釣地域は、中部山岳国立公園内に位置しており、入山には環境省と富山森林管理署の許可を得ることが推奨されています。

冬季以外は、黒部峡谷鉄道の鐘釣駅が最寄駅となりますが、鍾乳洞へ繋がる遊歩道などは整備されておらず、アクセスにはクライミング技術が必要になります。

脚注

環境省レッドデータブック：ホラアナゴマオカチグサ

外部リンク

地理院地図（電子国土web）- サル穴

関連項目

鍾乳洞

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