鼓 (春秋)

鼓（こ）は、中国春秋時代に存在した小規模な諸侯国です。現在の河北省石家荘市晋州市の西に位置しており、その歴史は白狄によって建国されたことに始まります。一説には祁姓の氏族が関与していたとも言われています。

鼓の歴史において、特に重要な出来事として、晋との攻防が挙げられます。紀元前527年、晋の将軍荀呉は軍を率いて鮮虞を討伐する際、鼓を包囲しました。この時、荀呉は鼓の民を一人も殺さず、将であった鼓子鳶鞮（こしえんてい）を捕らえて晋に連れ帰りました。晋は鼓の地を占領した後、鼓子鳶鞮を廟に供えてから帰国させました。しかし、帰国後、鼓子鳶鞮は晋に反旗を翻し、鮮虞に帰属しました。

その後、紀元前520年6月、荀呉は再び鼓に対して侵攻を開始しました。荀呉は東陽を視察し、米を運搬するふりをして兵士に甲冑を隠し持たせ、昔陽の門外で休息を取るという奇策を用いました。そして、鼓を急襲し、鼓子鳶鞮を再び捕らえ、鼓を滅ぼしました。この時、荀呉は渉佗（しょうた）に鼓の地の監視を命じ、鼓は完全に晋の支配下に入りました。

鼓が滅亡した後、その領地は戦国時代に入ると、下曲陽邑（かきょくようゆう）として知られるようになり、その歴史は新たな局面を迎えます。

このように、鼓は小規模な諸侯国でありながら、春秋時代の政治情勢に翻弄され、その興亡は周辺諸国との複雑な関係を示す一例と言えるでしょう。晋との間で繰り返された戦いは、当時の政治力学を反映しており、その滅亡は戦国時代の到来を告げる一つの出来事でもありました。また、鼓子鳶鞮の行動は、当時の諸侯が抱えていた葛藤や忠誠心の複雑さを物語っています。これらの歴史は、現代においても、古代中国の歴史を研究する上で重要な意味を持ち続けています。

参考資料としては、『中国歴史大辞典』が挙げられます。この辞典には、鼓に関する詳細な情報が記載されており、鼓の歴史をより深く理解する上で役立つでしょう。

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