龍芯

龙芯（Loongson）とは

龙芯（中: 龙芯、英: Loongson）は、中国科学院コンピューティング技術研究所によって設計された汎用中央処理装置（CPU）です。初期にはGodsonという名前で知られていました。MIPSアーキテクチャをベースに、独自のLoongISA®縮小命令セットアーキテクチャを採用しています。龙芯は、組み込みシステムからデスクトップ、サーバー、スーパーコンピュータまで、幅広い分野での利用を目指して開発が進められています。

開発の歴史

Godson時代 (2000-2010)

2000年: 龙芯一号（Godson-1）の開発が開始されました。
2001年: 中国科学院の支援により、正式に龙芯グループが設立されました。同年8月には、龙芯一号の設計検証システムがLinuxオペレーティングシステムを起動しました。
2002年: 中国初の汎用CPUである龙芯一号（コード名XIA50）が完成しました。
2003年: 中国初の64ビット汎用CPU、龙芯2B（コード名MZD110）が開発されました。
2006年: 龙芯2E（コード名CZ70）がリリースされ、周波数が1GHzを超える初の中国製汎用CPUとなりました。また、中国科学アカデミーとSTマイクロエレクトロニクスとの間で戦略的協力協定が締結されました。
2009年: 中国初のクアッドコアCPUである龙芯3A（コード名PRC60）が開発されました。

産業時代 (2010-現在)

2010年: 中国科学院と北京が共同で出資し、龙芯テクノロジー株式会社が設立され、龙芯は研究開発から産業化へと移行しました。
2012年: 8コア32nmプロセスを用いた龙芯3B1500が開発されました。
2013年: 龙芯テクノロジー株式会社は、北京市中関村に移転しました。
2015年: 次世代高性能プロセッサアーキテクチャGS464Eが発表されました。

プロセッサ/命令セット

龙芯一号 (Godson-1)

2000年に開発が開始された龙芯一号は、MIPSIIIに似たRISC命令セットを採用しています。メイン周波数266MHz、32ビット、7ステージパイプライン、400万個のトランジスタを搭載しています。性能はIntel Pentium IIに劣ります。

龙芯1号シリーズ

2010年以降、龙芯テクノロジー株式会社は、組み込み市場向けに龙芯1号シリーズを開発しました。このシリーズには、1A、1B、1C300/1C101、1D、1E04/1E0300/1E1000、1F04/1F300、1G、1H、1Jなどのモデルがあります。これらは、指紋認証、超音波計測、航空宇宙、オーディオ、石油掘削などの様々な用途に対応しています。

龙芯1A

2011年に開発された組み込み向けプロセッサです。32ビットのスーパースカラーGS232プロセッサコアを使用し、MIPS32命令セットと互換性があります。メイン周波数266MHz、消費電力1W未満です。

龙芯1B

龙芯1Aの簡易版として2011年にリリースされました。200MHzでクロックされ、32ビットのスーパースカラーGS232プロセッサコアを使用します。消費電力は0.5W未満です。

龙芯1C300

2013年に発売された指紋生体認証アプリケーション向けプロセッサです。300MHzで動作し、MIPS32命令セットと互換性があります。

龙芯1C101

2018年に開発されたチップで、8MHzで動作する32ビットプロセッサコア（GS132R）を搭載しています。消費電力は16.5mW/16.5μWです。

龙芯1D

2014年に発売された超音波計測チップで、スマート水道メーター、ガスメーター、カロリーメーターなどの用途に使用されます。

龙芯1G

オーディオチップで、GS232デュアル埋め込みプロセッサーコアを搭載し、LCDコントローラー、USB2.0インターフェースなどを統合しています。

龙芯1H

2017年にリリースされた石油掘削向け高温チップです。175°Cの超高温環境下での動作を保証します。

龙芯2号シリーズ

64ビットプロセッサシリーズで、初期モデルはGS464シリーズプロセッサコアを使用していました。その後、GS464Eプロセッサコアにアップグレードされました。2Kシリーズはデュアルコアプロセッサです。2GQはクアッドコアプロセッサです。2A/2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2I、2K1000/2K2000など、様々なモデルが存在します。

龙芯2A/2B

2003年に開発された64ビットプロセッサです。最大周波数300MHzで、Pentium IIを上回る性能を発揮しました。

龙芯2C

2004年に開発された龙芯2Bの最適化版です。500MHzで動作し、Pentium IIIと同等の性能を達成しました。

龙芯2E

中国初の90ナノメートル技術で設計されたプロセッサで、最大周波数は1GHzに達します。STマイクロエレクトロニクスとの協力により、開発されました。

龙芯2F

2007年にリリースされた、龙芯初の商業的に成功したプロセッサです。800MHzで動作し、MIPS III命令セットをサポートしています。

龙芯2G

2010年に開発された65ナノメートルプロセスを採用したプロセッサです。MIPS64命令セットと互換性があり、x86バイナリ変換命令を追加されています。

龙芯2H

1GHz以上で動作するセキュリティコンピューター向けプロセッサです。ネットワーク機器や産業用制御分野で使用されます。MIPS64命令セットをサポートし、X86バイナリ変換命令セットをサポートします。

龙芯2K1000

デュアルコアプロセッサで、40ナノメートルプロセスで製造されています。タブレットや産業用制御分野での利用を想定しています。

龙芯3号シリーズ

4送信64ビットマルチコアプロセッサです。GS464、GS464E、GS464V、GS464EVなどの微細構造に分かれています。3A1000、3B1000、3B1500、3A2000、3B2000、3A3000、3B3000、3A4000/3B4000、3A5000/3C5000などのモデルが存在します。

龙芯3A1000

2009年に開発されたクアッドコアプロセッサです。65ナノメートルプロセスで製造され、最大周波数は1GHzです。x86バイナリ変換アクセラレーション命令を実装しています。

龙芯3B1000

2010年に開発された8コアプロセッサです。1GHzで動作し、ピーク浮動小数点性能は128GFlopsです。

龙芯3B1500

2015年に開発された8コアプロセッサです。32ナノメートルプロセスで製造され、1.5GHzでクロックされます。チップ面積は180mm2、トランジスタ数は11億です。

龙芯3A2000

2015年にリリースされたクアッドコアプロセッサで、GS464Eマイクロアーキテクチャを使用する最初のプロセッサです。40ナノメートルプロセスで製造され、周波数は800〜1000MHzです。

龙芯3A3000/3B3000

2017年にリリースされたクアッドコアプロセッサで、1.2GHz〜1.5GHzでクロックされます。LoongISA®1.0命令セットをサポートします。

龙芯3A4000/3B4000

次世代高性能プロセッサで、GS464EVマイクロアーキテクチャを使用しています。2.0GHzで動作し、LoongISA®2.0命令セットをサポートします。

龙芯3A5000/3C5000

次世代高性能プロセッサで、3A5000は4コアプロセッサ、3C5000は16コアプロセッサです。14/12nmプロセスで製造され、2.5GHzで動作します。

龙芯チップセットシリーズ

龙芯7A1000

龙芯3プロセッサ向けの最初のチップセット製品です。AMD RS780（E）+ SB710チップセットに代わるものとして開発されました。

龙芯7A2000

龙芯の次世代サポートブリッジで、7A1000のアップグレード版です。

LoongISA®

龙芯独自の自律CPU命令セットです。MIPS®命令セットから拡張されており、LISA®1.0とLISA®2.0の2つのバージョンがあります。

その他

隠れたプロセッサー

開発過程で、Godson-T、Godson-Xなどの実験的なプロセッサーも開発されましたが、大量生産には至っていません。

龙梦一号

中科龙梦（現在の航天龙梦）が開発した、龙芯の初期IPコアを使用したSoCチップです。

GS32I-400 SOC

龙芯2に基づいて設計されたSoCチップで、周波数400MHz、16Kデータバッファと16K命令キャッシュを搭載しています。

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