龍門寺 (さいたま市)

龍門寺：歴史と文化が息づく岩槻の古刹

さいたま市岩槻区に佇む龍門寺は、曹洞宗に属する由緒ある寺院です。その歴史は天文10年（1550年）に遡り、佐枝若狭守によって創建されました。佐枝若狭守は、格叟寅越という僧侶を招き、自身の屋敷内に寺を建立したと伝えられています。龍門寺は、創建以来、地域の人々の信仰を集め、静かに時の流れを見守ってきました。

18世紀半ば、宝暦6年（1756年）に、大きな転機が訪れます。江戸幕府第9代将軍・徳川家重を支えた大岡忠光が岩槻藩2万石に加増転封されると、龍門寺は大岡家の菩提寺となりました。以来、大岡家の歴史と深く結びつき、繁栄を続けました。現在も境内には、大岡忠光を始めとする大岡家の人々の墓が静かに眠っており、その歴史を物語っています。

龍門寺は、歴史的価値の高い建造物や史跡を数多く有していることでも知られています。

まず、寺宝として大切に保管されている刀無銘伝助真は、国の重要文化財に指定されており（大正9年4月15日指定）、その精緻な造りや歴史的意義から、多くの研究者の注目を集めています。また、寺が所蔵する古文書や仏像などの龍門寺所蔵資料は、さいたま市指定有形文化財に指定されており（平成13年3月5日指定）、龍門寺の長い歴史を紐解く貴重な資料となっています。

さらに、寺の威厳を感じさせる龍門寺山門も、さいたま市指定有形文化財に指定されています（平成16年1月7日指定）。重厚な造りと風格は、往時の栄華を偲ばせます。そして、大岡家の墓所は、さいたま市指定史跡として大切に保護されています（昭和35年4月1日指定）。大岡家の歴史を知る上で重要な場所であり、多くの参拝者にとって感慨深い場所となっています。

龍門寺へのアクセスは良好です。JR宇都宮線岩槻駅から徒歩約17分と、駅から比較的近い距離に位置しています。静寂な境内では、歴史の重みを感じながら、ゆっくりと時間を過ごすことができます。都会の喧騒を離れ、歴史と文化に触れたい方にとって、龍門寺はまさに最適な場所と言えるでしょう。

参考文献：稲葉博 著『関東古社名刹の旅（千葉・埼玉・神奈川編）』読売新聞社、1986年

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