徳川家重

徳川家重（とくがわ いえしげ）

徳川家重は、江戸時代中期を代表する第9代将軍であり、1745年から1760年までその地位にありました。彼は、和歌山藩主徳川吉宗の長男として、1712年12月21日に江戸赤坂の藩邸で生まれました。母は家臣の娘であり、幼名は長福丸と名付けられていました。

将軍になるまで

家重は、将軍職への道を歩む中で、幼少期からの健康問題に苦しむこととなります。口疾患や発話の難しさにより、大奥にこもりがちな生活を送り、酒色にも溺れていました。こうした背景から、彼は常に将軍の継嗣として不適格と見なされ、父・吉宗の周囲を悩ませました。1771年、吉宗は家重を第9代将軍として任命しましたが、実際の権力は吉宗が大御所として握り続けました。その理由として、家重の健康問題があり、相続に関する規則の厳守が背景にあると考えられています。

家重は、吉宗が期待したような実行力を持たなかったものの、彼の存在により政権の継続が確保されました。彼の将軍職は身体的な制約があったものの、次世代の家治への希望を感じさせる要因でもありました。

将軍としての業績

家重の在任期間中、吉宗の享保の改革の影響は続いていました。彼は経済政策を柔軟に修正し、各部局の予算制度を整え、特に勘定吟味役を強化しました。しかし、以前の増税策の影響により一揆が頻発し、社会不安が拡大しました。特に郡上一揆では、家重は不正に関与した幕府の高官を厳正に裁くなどの対応を見せました。

また、家重は薩摩藩に木曽三川の工事を命じ、膨大な費用を投じさせました。一方で、健康の悪化に伴い、言語における不明瞭さが深刻化し、側近の大岡忠光が唯一彼の言葉を理解できる存在となりました。そのため、大岡忠光を重用し、側用人制度を復活させることになります。家重の側近は、彼の権力を補完するため、優れた判断を下すことが期待されました。

家重の人物像と逸話

家重は、頻尿に悩まされていたため、「小便公方」という揶揄が広まりました。彼は実際、江戸城からの移動の際に、途中でトイレを設置させるほどでした。また、彼の私生活では、側室の寵愛を受けるも、酒に溺れ続けるなどの問題がありました。特に、彼が別の側室を寵愛してからは、元々の側室との仲は疎遠になりました。

また、家重の言語不明瞭さは、脳性麻痺が原因とも言われています。彼は健康問題を抱えていたため、最終的には尿路感染症で余命を終えました。家重は、1760年に亡くなり、その後、長男家治に将軍職を譲りました。

評価と影響

家重は時代背景から見て無能な将軍とされた一方で、その政治的影響力や側近を重視した姿勢について、高い評価を受けています。彼の政治手腕や人事能力は、障害を抱えながらも十分に作用したことを示しています。家重の政治は、無理なく政権を支えるものであり、彼の代には多くの改革が行われました。

結論

徳川家重は、健康上の制約がありながらも、時代を平穏に導いた重要な将軍でありました。彼の在任期間は、多くの挑戦と変革を抱えつつも、父・吉宗の遺産を受け継いだことであり、江戸時代の重要な一角を担う存在となったのです。

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