.tel

.telドメインは、インターネット上の特定の用途に限定されたスポンサー付きトップレベルドメイン（sTLD）として位置づけられています。その主な目的は、個人や組織の連絡先情報を、ウェブサイトを構築することなく、ドメイン名そのものに紐づけて公開することです。これにより、電話番号やメールアドレス、SIPアドレス、あるいはインスタントメッセンジャーのIDといった様々なコミュニケーション手段に関する情報を、覚えやすいドメイン名一つで提供することが可能になります。これは、従来の数字が主体となる連絡先情報体系に、ドメイン名という名前空間によるサポートを加えるものと言えます。

このドメインは、Telname Limitedという後援組織によって推進・運営されています。`.tel`ドメインの導入プロセスは、ICANN（Internet Corporation for Assigned Names and Numbers）における承認から始まりました。2006年5月に正式な承認を受け、その後、ドメイン登録に向けた準備が着実に進められました。インターネットの根幹を支えるルートサーバへの登録は、2007年3月2日に完了しました。

実際のドメイン登録受付は段階的に実施されました。まず、商標権者などが優先的に登録できるサンライズ期間が、2008年12月3日から2009年2月2日まで設けられました。次に、より広い範囲の権利保有者などが対象となるランドラッシュ期間が、2009年2月3日から2009年3月23日まで実施されました。これらの期間を経て、最終的に一般の誰もが自由に`.tel`ドメインを登録できる一般登録が、2009年3月24日から開始されました。

`.tel`ドメインの用途の一部には、携帯電話などのモバイルデバイス上での利用が想定されるものもあり、この点から同じsTLDである`.mobi`ドメインと市場が競合するのではないかという指摘がなされることもありました。事実、これら二つのドメインは、ICANNによって同じラウンドで承認を受けています。しかし、この二つを混同するのは正確ではありません。

端的に言えば、`.tel`ドメインは「連絡先データそのものを公開・管理すること」に特化しています。これに対し、`.mobi`ドメインは「携帯電話やその他のモバイル機器で快適に閲覧・利用できるウェブサイトやアプリケーションのユーザーインターフェイスを提供すること」に焦点を当てています。したがって、`.tel`は連絡先情報のディレクトリ機能や名刺のような役割を果たすのに対し、`.mobi`はモバイル環境でのウェブプレゼンスを最適化するためのものです。両者の担う役割は明確に異なり、その用途には根本的な違いがあります。

なお、過去にはTelname Limitedが推進する`.tel`ドメインとは異なる体系を持つものの、同じ`.tel`という名称で新規トップレベルドメインの導入をICANNに申請していた企業（Pulver社）があったことも付記しておきます。

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