1と0と加藤シゲアキ

『１と０と加藤シゲアキ』

加藤シゲアキの作家生活10周年を記念して刊行された単行本。加藤自身が責任編集を務め、KADOKAWAから2022年9月30日に発売されました。本書は、加藤の多岐にわたる創作活動の集大成とも言える内容で、彼の作家としての軌跡と、未来への展望を示す一冊となっています。

概要

本書の目玉企画として、加藤が原作・脚本・監督・主演を務めたショートフィルム『渋谷と１と０と』が制作され、YouTubeで公開されました。また、恩田陸や中村文則など、加藤と親交のある作家陣による競作企画も実現。小説、詩、俳句といった様々な形式で「渋谷と○○」をテーマにした作品が収録されています。さらに、加藤による初の戯曲「染、色」や、アイドルと作家という二つの顔を持つ彼ならではの視点からライブパフォーマンスを解説するコンテンツも収められています。

装丁は、数々の書籍デザインを手がける祖父江慎が担当。2022年9月23日には刊行記念イベントが開催され、同年10月7日には重版が決定するなど、大きな話題を呼びました。

『ダ・ヴィンチ』BOOK OF THE YEAR 2022 エッセイ・ノンフィクション・その他部門では第1位、TOWER BOOKS 2022 年間ランキング書籍部門でも第1位を獲得するなど、各方面から高い評価を得ています。

タイトルの「１と０」は、10周年を表すだけでなく、量子コンピュータのビットを意味しており、加藤自身の思考の変化が込められています。彼は、「これまでは白と黒、男性と女性といった二元論的な考え方をしてきたが、これからの時代は様々なものにグラデーションがあり、1と0が同時に存在する」という考えを持つようになったと語っています。また、アイドルと作家という二つの側面を持つ自身に対する認識についても、「アイドルと作家は分立していない」というメッセージが込められています。

収録内容（一部）

競作「渋谷と○○」
又吉直樹 「渋谷とネガフィルム」
最果タヒ 「渋谷と恋」
深緑野分 「渋谷とデートプラン」
珠川こおり 「渋谷と廃墟」
羽田圭介 「渋谷とビジネスホテル」
中村文則 「渋谷と彼の地」
堀本裕樹 「渋谷と『ピンクとグレー』」
恩田陸 「渋谷と御守」
対談（白石和彌、前川知大、又吉直樹）
インタビュー＆対談再録
戯曲「染、色」
小説「渋谷と一と〇と」
脚本「渋谷と１と０と」
ショートフィルム『渋谷と１と０と』撮影現場レポート
10年の作家生活を振り返る2.5万字超ロングインタビュー
《１と０と》撮り下ろしグラビア
『ピンクとグレー』から最新の雑誌連載までを網羅する全著作ガイド
作家とアイドルの境界線を紐解く、ライブパフォーマンス解説
書店店頭から10年を見届けてきた書店員座談会
ショートフィルム『渋谷と１と０と』

ショートフィルム『渋谷と１と０と』

加藤シゲアキが原作・脚本・監督・主演を務めたショートフィルム。渋谷の街を彷徨いながら次作の構想を練る小説家と、リネンサプライ会社で働く男の二役を演じています。作中には梶井基次郎の『檸檬』が引用されており、主人公が『檸檬』を念仏のように唱えるシーンや、作品全体に『檸檬』へのオマージュが見られます。

2022年9月23日よりYouTubeで配信されています。同タイトルの小説が原作とされていますが、実際にはタイトルを同じくするのみで、ショートフィルムと小説は異なる展開となっています。これは、映像作品の制作上の制限から、より自由度の高い小説が後に執筆されたためです。

リネンサプライを題材にしたのは、コロナ禍で補償制度が適用されず倒産を余儀なくされた企業が多かったという話を聞いたことがきっかけです。加藤は、誰にも救われなかった存在に光を当てることこそ、現代の作家の責任であると感じたと語っています。

キャスト・スタッフ

加藤シゲアキ
寺尾紗穂

主要スタッフ

原作・脚本・監督: 加藤シゲアキ
撮影: 山田弘樹
音楽: 林正樹
制作プロダクション: AOI Pro.

エピソード

中村文則と羽田圭介が競作企画に参加したきっかけは、加藤が出演する番組「タイプライターズ～物書きの世界～」（フジテレビ系）での共演でした。番組撮影中に加藤が寄稿を依頼し、普段は短編の依頼を断るという両名も、加藤の頼みであればと快諾したそうです。

ショートフィルムの撮影は、加藤が主演する舞台『粛々と運針』とNEWSのライブツアーの公演準備と並行して行われました。多忙なスケジュールの中、舞台稽古の中断期間を利用して2日間で撮影を敢行したとのことです。

本書のタイトル『１と０と加藤シゲアキ』よりも先に、ショートフィルム及びその原作のタイトル『渋谷と一と〇と』が決定していました。加藤の初期作品は渋谷を舞台としたものが多く、「渋谷サーガ」とも呼ばれています。作家生活10周年を記念し、原点回帰の意味を込めて渋谷を舞台にすることが決まったそうです。

外部リンク

ショートフィルム『渋谷と１と０と』- YouTube
『1と0と加藤シゲアキ』特設サイト - KADOKAWA
『1と0と加藤シゲアキ』PR動画（KADOKAWA提供） - Johnny's Official Youtubeチャンネル

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