1ドル硬貨 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国1ドル硬貨の歴史

アメリカ合衆国で流通する1ドル硬貨は、その歴史の中で様々な変遷を遂げてきました。初期には「シルバー・ダラー」と呼ばれ、銀を素材としていましたが、現在は金色の合金が用いられています。本稿では、1ドル硬貨の歴史を詳細に辿り、各時代の硬貨の特徴や背景について解説します。

シルバー・ダラーの誕生

1794年、アメリカ合衆国で最初に発行されたドル硬貨は「シルバー・ダラー」でした。当時は銀を素材としており、その大きさと美しいデザインから、多くの人々に愛されました。しかし、銀の価格変動や流通量の問題から、後に様々な素材やデザインの1ドル硬貨が登場することになります。

初期のシルバー・ダラー (1794年～1803年, 1804年)

1794年から1803年にかけて製造された初期のシルバー・ダラーは、収集家の間で非常に高い価値を持っています。特に、1804年銘の硬貨は非常に希少で、世界で最も有名な硬貨の一つです。これは、実際には1834年に製造されたにもかかわらず、1804年の刻印が打たれたためです。この硬貨は、当時アジアの支配者への贈り物として製造されたもので、現在では数百万ドルで取引されることもあります。

シーテッド・リバティ・ダラー (1840年～1873年)

1840年から1873年にかけて製造された「シーテッド・リバティ・ダラー」は、盾を持つ女神リバティが描かれたデザインが特徴です。この硬貨は、90%の銀と10%の銅の合金で作られており、クリスチャン・ゴブレヒトがデザインを担当しました。

ゴールド・ダラー (1849年～1889年)

1849年から1889年にかけて製造された「ゴールド・ダラー」は、純金90%で構成された金貨です。表側には女神の横顔が、裏側には花冠と製造年が描かれています。デザインは途中で「リバティ・ヘッド」から「インディアン・ヘッド」に変更されました。

トレード・ダラー (1873年～1885年)

1873年から1885年にかけて製造された「トレード・ダラー」は、アジア諸国との貿易を目的として発行されました。ウィリアム・バーバーがデザインを担当し、表側にはオリーブの枝を持つリバティの全身像、裏側にはハクトウワシが描かれています。当時のアジアでのメキシコ銀貨の優位性を解消するため、量目を増やして製造されました。

モーガン・ダラー (1878年～1904年, 1921年)

1878年から1904年、そして1921年に製造された「モーガン・ダラー」は、その美しいデザインと収集のしやすさから、現在でも人気が高い硬貨です。イギリスの彫刻家ジョージ・T・モーガンがデザインを担当しました。特に1895年のプルーフ硬貨や、カーソンシティ造幣局で製造された硬貨は高値で取引されています。また、エラー硬貨として「ベリー・ボタン」ダラーも存在します。

ピース・ダラー (1921年～1928年, 1934年～1935年)

1921年12月に導入された「ピース・ダラー」は、メダル意匠家のアンソニー・デ・フランシシによってデザインされました。第一次世界大戦の終結を記念して製造され、1928年まで製造されましたが、1934年に短期間再開しました。1965年には、1964年銘で少量の硬貨が製造されましたが、計画は頓挫しました。

近代の1ドル硬貨

アイゼンハワー・ダラー (1971年～1978年)

1971年から1978年にかけて製造された「アイゼンハワー・ダラー」は、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領の肖像と、アポロ11号の月面着陸を描いたデザインが特徴です。大きく重いため、流通は限定的でしたが、カジノでは広く使用されました。

アンソニー・ダラー (1979年～1981年, 1999年)

1979年から1981年に製造された「アンソニー・ダラー」は、女性参政権運動家のスーザン・B・アンソニーの肖像が描かれています。サイズが小さく、25セント硬貨と間違えやすいため、「カーター・クォーター」と揶揄されることもありました。1999年に再び製造されました。

アメリカン・シルバー・イーグル (1986年～)

1986年より製造されている「アメリカン・シルバー・イーグル」は、地金型銀貨であり、流通を目的とした硬貨ではありません。そのため、銀の相場に応じて価格が変動します。

サカガウィア・ダラー (2000年～現在)

2000年から現在まで製造されている「サカガウィア・ダラー」は、ネイティブ・アメリカンの女性サカガウィアの肖像が描かれています。アンソニー・ダラーと同じ大きさ・重量・電磁学的特性を持っていますが、金色の特徴が異なります。流通量はそれほど多くありませんが、自動販売機などで使用されることがあります。

大統領1ドル硬貨 (2007年～現在)

2007年から製造されている「大統領1ドル硬貨」は、歴代のアメリカ大統領の肖像が描かれています。毎年4種類ずつ発行され、人々に硬貨への関心を維持させる意図があります。縁にはモットーや製造年、ミントマークが刻まれており、エラー硬貨として縁の文字が欠落したものが存在します。

1ドル硬貨の流通と現状

1ドル硬貨は、1ドル紙幣と並行して流通していますが、紙幣に比べて流通量は少ないです。しかし、自動販売機やカジノなどでは、代替貨幣として使用されることもあります。また、収集家にとっては、歴史と美しさを兼ね備えた魅力的なコレクション対象となっています。

このように、アメリカの1ドル硬貨は、その歴史の中で様々な変化を遂げてきました。各時代の硬貨は、それぞれ異なるデザインや素材で作られており、当時の社会背景や技術が反映されています。1ドル硬貨は、単なる通貨としてだけでなく、歴史を語る上で貴重な存在であると言えるでしょう。

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