10セント・ビア・ナイト

10セント・ビア・ナイトの概要

10セント・ビア・ナイトとは、1974年6月4日にテキサス・レンジャーズとクリーブランド・インディアンスによる試合で発生した、観客の暴徒化が原因で試合が中止となった騒動を指します。クリーブランド・インディアンスがビールを10セント（現在の日本円で約28円）という超格安で販売したことが引き金となり、多くの酔った観客がフィールドに乱入する事態に至りました。この結果、試合は没収試合とされ、レンジャーズ側に勝利が付与されました。

背景

この試合の1週間前にも、レンジャーズの本拠地アーリントン・スタジアムで観客が安く販売されたビールを楽しむ中で集団乱闘が発生しています。当時クリーブランドでは多くの工場が閉鎖され、失業者が増加していました。その状況を受けてインディアンスチームは、集客を図るためにこのようなプロモーションを実施し、結果として25,000人以上の観客がスタジアムに詰めかけました。

試合の経過

試合が始まると、すでに多くの観客が酔っており、試合開始早々から騒動が起こります。1回の終わりには、場内 خارج地からの爆発音が聞こえたり、2回には女性がフィールドに乱入し、次のバッターが待つ場所で服を脱ぐ騒ぎがありました。さらに、4回にはレンジャーズのトム・グリーヴが本塁打を打つと、裸の男性がフィールドにスライディングするという目を疑うような出来事も発生しました。5回には父親と子供が観客の前で不適切な行動を見せ、混乱が増幅しました。

試合自体は、インディアンスが最初にリードを許したものの、9回の1アウトから同点へと追いつくことに成功します。しかし、その頃には観客からフィールドに対してゴルフボールや乾電池などが投げ込まれる事態に発展します。レンジャーズの外野手、ジェフ・バロウズがファンにグラブを奪われ、スタンドに追い込まれるといった危険な状況が続きました。場合によっては、審判も観客に襲われ、しかも内野のベースが盗まれるという混乱の極みに達しました。

試合の結末

結局、試合の続行が不可能となり、審判は没収試合を宣言。結果的にレンジャーズの勝利が認められました。試合後にはクリーブランド警察の機動隊が介入し、騒動に関与した観客が逮捕される事態に至ります。アメリカンリーグの会長リー・マクフェイルは以降、ビールなどのアルコール類を安く提供するイベントを行うことを勧告しましたが、インディアンスはその後のシーズン中も同様のイベントを続けると主張しました。

事件の影響

当時インディアンスの選手だったラスティ・トーレスは、この試合が自らが経験した2回目の没収試合であることを語っています（1回目はヤンキース時代に起こったもの）。さらに、彼は後の「ディスコ・デモリッション・ナイト」にも立会っており、この試合の影響がその後のイベントにも繋がる結果となりました。

10セント・ビア・ナイトは、メジャーリーグの歴史の中でも特筆すべき事件として記録され、スポーツの現場においてアルコールの影響と観客動員の力関係についての議論を呼ぶきっかけとなりました。

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