13番街

ニューヨークの幻の通り、13番街：消滅と再生の物語

ニューヨーク市マンハッタン区。碁盤の目のような街並みを走る通りの中に、かつて「13番街」という通りが存在しました。1837年にハドソン川の埋立地に建設されたこの通りは、11丁目から29丁目にかけて北へ延びていましたが、現在ではわずか1ブロックしか残っていません。なぜ13番街は姿を消してしまったのでしょうか？

大型客船時代の到来と埠頭拡張の必要性

20世紀初頭、ルシタニアやタイタニックといった巨大な豪華客船が登場し、ニューヨーク港にはこれらの船舶に対応できる、より長い埠頭が必要となりました。ニューヨーク市はハドソン川沿岸に、従来よりも長い埠頭を建設する計画を立てましたが、バルクヘッド・ラインを管理するアメリカ政府は、この計画をなかなか承認しませんでした。

鉄道インフラと23丁目フェリー駅

海運会社は、マンハッタンから離れた場所への埠頭建設には消極的でした。ニューヨーク・セントラル鉄道の路線や23丁目フェリー駅など、船舶とマンハッタンを結ぶ重要なインフラがすでに整備されていたからです。これらのインフラを活用するため、海運会社は既存の場所に埠頭を拡張することを望んでいました。

異例の決断：埋立地の削り取り

そこでニューヨーク市は、22丁目より南の埋立地をまるごと削り取るという、大胆な解決策を実行しました。これにより、大型客船に対応できるチェルシー埠頭の建設が可能になったのです。しかし、この工事によって13番街は大部分が削り取られ、地図から姿を消すことになりました。

わずかに残された痕跡：ガンズヴォード・ペニンシュラ

現在、13番街として残っているのは、ガンズヴォード通りの北側の小さな区画のみです。ここはウエスト・ワシントン・マーケットの一部として例外的に残され、「ガンズヴォード・ペニンシュラ」と呼ばれる場所になっています。この1ブロックは、ガンズヴォード通りからウエストサイド・ハイウェイを渡った場所に位置し、ブルームフィールド通りゴミ収集車車庫の裏手にあります。

ゴミ収集車と清掃局職員の駐車場

現在、残された13番街は、ゴミ収集車やニューヨーク市清掃局職員の自家用車が駐車場として利用されています。13番街を示す標識などは一切なく、かつてそこが通りであったことを示すものは何もありません。

未来への提案：砂浜とリサイクル埠頭

このわずかに残された13番街を、砂浜にする、あるいはリサイクル可能な廃棄物を船舶に積み込むための埠頭にするという提案も出ています。かつてニューヨークの物流を支えた13番街が、再び新たな役割を担う日が来るかもしれません。

関連項目

* 13番街駅 - かつて存在したニューヨーク地下鉄の駅



13番街は、ニューヨークの都市計画の歴史における、興味深い事例の一つです。大型客船時代の到来と、それに伴うインフラ整備の必要性が、1つの通りを消滅させるという結果をもたらしました。しかし、その痕跡は今もなお、マンハッタンの一角にひっそりと残されています。

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