15年後のラブソング

『15年後のラブソング』

2018年に公開されたアメリカ合衆国とイギリス合作のロマンティック・コメディ映画。監督はジェシー・ペレッツが務め、主演はローズ・バーンとイーサン・ホークが担当している。本作は、イギリスの作家ニック・ホーンビィが2009年に発表した同名小説『Juliet, Naked』を原作としており、突如として表舞台から姿を消した伝説的なロックスターと、彼に心酔する男性ファン、そしてそのファンの恋人という三者の間に生まれる、予期せぬ繋がりと人生の変化を描いている。

物語の舞台は、イギリスの静かな港町サンドクリフ。主人公のアニーは、亡き父から受け継いだ郷土史博物館を経営している。彼女は長年連れ添っているパートナーのダンカンと共に平穏な日々を送っているが、どこか満たされない物足りなさを感じていた。一方、ダンカンは1993年以降活動を休止し、ファンの間で半ば伝説と化していたアメリカのロックミュージシャン、タッカー・クロウの熱狂的なファンである。彼はタッカーの音楽を深く愛し、その動向を追い続けていた。

そんなある日、ダンカンはタッカーの代表曲のデモ音源を収録した未発表アルバム『Juliet, Naked』を入手する。ダンカンがそのデモ音源に夢中になるのに対し、アニーはその粗削りな出来に失望を隠せない。正直な感想を口にしたことから、アニーとダンカンは激しい口論となってしまう。納得がいかないアニーは、ダンカンが熱心に運営するタッカーのファンサイトに、『Juliet, Naked』に対する手厳しいレビューを匿名で投稿する。

ところが、思いがけない出来事が起こる。アニーのレビューを見たタッカー本人から、彼女のもとに直接メールが届いたのだ。タッカーはアニーの率直な意見に感謝を示し、これを機に二人はメールでのやり取りを始めるようになる。熱狂的なファンであるダンカンを介さない、伝説のロックスターと一般女性の個人的な繋がり。この予期せぬ出会いと交流は、停滞していたアニーの人生に新たな波紋を投げかけ、同時に隠遁生活を送っていたタッカー自身の心にも、そして二人の関係を知ったダンカンにも、大きな変化をもたらしていくことになる。

主要なキャストとして、郷土史博物館を経営するアニーをローズ・バーンが、消息を絶った元ロックスター、タッカー・クロウをイーサン・ホークが演じている。そして、タッカーに心酔するアニーのパートナー、ダンカン役をクリス・オダウドが務めている。この三角関係を中心に、タッカーの複雑な家族やアニーの妹など、個性豊かなキャラクターたちが物語に彩りを添えている。

製作面では、2016年10月にジェシー・ペレッツの監督起用と主要キャストの交渉が報じられ、翌年にかけてキャストが固まった。楽曲はネイサン・ラーソンが手掛け、サウンドトラックは2018年8月にリリースされている。

本作は2018年1月にサンダンス映画祭で初上映され、同年8月には全米で限定公開された。批評家筋からの評価は概ね好意的であり、映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、161件のレビューに基づき83%の支持率を獲得（平均評価6.85/10点）。批評家の総意としては、物語の筋立て自体に目新しさはないものの、主演のローズ・バーンとイーサン・ホークの相性の良さや、魅力的なキャスト陣による優れた演技が作品全体の魅力を高めている点が評価されている。Metacriticでも33件のレビューに基づき、加重平均値67/100というスコアを記録している。

ニック・ホーンビィの原作が持つ人間ドラマとユーモアを、才能あるキャストとスタッフが映像化した作品として、観る者に人生における予期せぬ出会いと変化の可能性を感じさせる一作である。

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