17世紀フィレンツェ派の画家

17世紀フィレンツェ派の画家たち

17世紀のフィレンツェでは、ルネサンス後期のマニエリスム様式から、より自然で感情豊かなバロック様式へと絵画が移行していきました。この変遷期に活躍した画家たちは、互いに影響しあいながら、独自の画風を確立していきました。以下に、主要な画家たちとその特徴を解説します。

17世紀フィレンツェ派の先駆者たち

サンティ・ディ・ティート (Santi di Tito, 1536年 - 1603年)

サンティ・ディ・ティートは、フィレンツェ派の基礎を築いた重要な画家です。ローマでマニエリスムを学んだ後、フィレンツェに戻り、当初はその様式を用いていましたが、後に単純で純粋なスタイルへと変化させました。この純粋主義は、17世紀のフィレンツェ派の特徴となります。彼の作品は、ヴェッキオ宮殿の装飾などに見られます。

ベルナルディーノ・ポッチェッティ (Bernardino Poccetti, 1548年 - 1612年)

ポッチェッティは、建築ファサードの装飾から画家としての活動を始めました。ローマ滞在後、フィレンツェに戻り、同時代の画家たちと競いながら多くの絵画を制作しました。彼の作品は、同時代のフィレンツェ派の画家たちとの相互作用を示すものです。

グレゴリオ・パガーニ (Gregorio Pagani, 1558年 - 1605年)

パガーニは、サンティ・ディ・ティートの弟子であり、後期マニエリスムの画家として知られています。ルドヴィーコ・カルディの工房でも学び、クリストーファノ・アッローリやマッテオ・ロッセッリといった弟子を育てました。

ルドヴィーコ・カルディ (Lodovico Cardi, 1559年 - 1613年)

チーゴリの通称で知られるカルディは、アレッサンドロ・アッローリの元で修練し、サンティ・ディ・ティートやフェデリコ・バロッチの影響を受けました。また、コレッジョやティツィアーノからもインスピレーションを得て、独自の様式を確立しました。晩年はローマで活動しました。

ドメニコ・クレスティ (Domenico Cresti, 1559年 - 1638年)

パッシニャーノの通称で知られるクレスティは、フィレンツェで修行後、ローマやヴェネツィアで学びました。特にヴェネツィアではティントレットの影響を受けました。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラの装飾にも携わりました。彼の作品は、ポッチェッティの様式に似ていますが、手早い技法が特徴でした。

アンドレア・ボスコリ (Andrea Boscoli, 1560年 - 1607年)

ボスコリは、サンティ・ディ・ティートの弟子で、師の様式を非常に良く理解していたため、師の作品と見分けがつかないほどであったとされています。

バルトロメオ・カルドゥッチ (Bartolomeo Carducci, 1560年 - 1608年)

カルドゥッチは、バルトロメオ・アンマンナティの元で修練し、ストゥッコ装飾にも携わりました。

ジョヴァンニ・バルディヌッチ (Giovanni Baldinucci, 1560年 - 1631年)

バルディヌッチは、フィレンツェで生まれ、ナポリで没しました。

アゴスティーノ・チャンペッリ (Agostino Ciampelli, 1565年 – 1630年)

チャンペッリは、サンティ・ディ・ティートの弟子で、フィレンツェの宗教改革期の絵画の特徴である保守的な描き方を学びました。

17世紀フィレンツェ派の隆盛

フランチェスコ・クッラーディ (Francesco Curradi, 1570年 - 1661年)

クッラーディは、バロック様式の画家であり、17世紀前半のフィレンツェ派の宗教絵画の重要な代表者です。彼の作品は、構図の直接的な効果、綿密なデッサン、滑らかな明暗法が特徴です。初期には後期マニエリスムの影響が見られましたが、後にチーゴリやパッシニャーノの様式を取り入れました。聖マリア・マッダレーナ・デ・パッツィと親交があり、彼女の公式肖像画家でもありました。

アナスタシオ・フォンテブォーニ (Anastasio Fontebuoni, 1571年 - 1626年)

フォンテブォーニは、ドメニコ・クレスティの弟子です。初期作品は現存していませんが、ローマでカラヴァッジョの影響を受け、その影響が後の作品に顕著に表れています。フィレンツェに戻ってからも、同時代の画家たちと共に活動しました。

ファブリツィオ・ボスキ (Fabrizio Boschi, 1572年 - 1642年)

ボスキは、カーサ・ブォナッロティの装飾にも参加した画家です。

フィリッポ・タルキアーニ (Filippo Tarchiani, 1576年 – 1645年)

タルキアーニは、カラヴァッジョの様式とフィレンツェの素描の伝統を融合させた独自のスタイルで絵画制作を行いました。

クリストーファノ・アッローリ (Cristofano Allori, 1577年 - 1621年)

アッローリは、ブロンズィーノとヴァザーリの死後、フィレンツェで最も優れた画家の一人として認められました。宮廷で重用され、多くの作品を制作しました。

マッテオ・ロッセッリ (Matteo Rosselli, 1578年 - 1650年)

ロッセッリは、グレゴリオ・パガーニの弟子で、パガーニの死後、彼の工房を引き継ぎました。アンドレア・デル・サルトの作品を研究し、独自のスタイルを確立しました。

ジョヴァンニ・ビリヴェール (Giovanni Bilivert, 1585年 – 1644年)

ビリヴェールは、アカデミア美術館の聖ルカ組合に所属した画家です。

ジョヴァンニ・ダ・サン・ジョヴァンニ (Giovanni da San Giovanni, 1592年 – 1636年)

ジョヴァンニは、マッテオ・ロッセッリの弟子であり、後にジュリオ・パリージにも師事しました。画家だけでなく、建築家や背景画家としても活躍しました。

フランチェスコ・フリーニ (Francesco Furini, 1603年 - 1646年)

フリーニは、マッテオ・ロッセッリに弟子入りし、カラヴァッジョの影響を受けました。ガリレオ・ガリレイとも親交がありました。彼の作品は、柔らかく官能的な表現が特徴で、特に裸体女性像で際立っています。

ロレンツォ・リッピ (Lorenzo Lippi, 1606年 - 1665年)

リッピは、マッテオ・ロッセッリのもとで学びましたが、サンティ・ディ・ティートの影響を最も受けました。彼の作品は、美的センス、繊細さ、素描の素質、肖像画のような自然さが特徴です。宮廷画家としてインスブルックに移住しました。

バルダッサーレ・フランチェスキーニ (Baldassarre Franceschini, 1611年 - 1689年)

ヴォルテッラーノの通称で知られるフランチェスキーニは、マッテオ・ロッセッリの弟子であり、フィレンツェ、ヴォルテッラ、ローマで活躍しました。

シモーネ・ピニョーニ (Simone Pignoni, 1611年4月17日-1698年1月16日)

ピニョーニは、フィレンツェ出身の画家です。

カルロ・ドルチ (Carlo Dolci, 1616年5月25日 - 1686年1月17日)

ドルチは、フィレンツェ出身の宗教画家として知られています。

これらの画家たちは、17世紀のフィレンツェ絵画を豊かに彩りました。マニエリスムからバロックへの移行期において、彼らはそれぞれの個性を発揮し、後世に大きな影響を与えました。

もう一度検索