1812年ロシア戦役

1812年ロシア戦役

1812年に起こったロシア戦役は、フランスのナポレオン1世がロシア帝国に侵攻し、その結果として敗北した歴史的な出来事です。この戦役はナポレオン戦争の重要な転換点となり、フランス帝国の大陸軍は出発時の兵力からわずか2%未満にまで激減しました。この戦争の結果はロシア文化にも深い影響を与え、レフ・トルストイの小説『戦争と平和』にその影響を見出すことができます。

戦争の名称

ロシアではこの戦争は「祖国戦争」として知られ、1941年からは「1812年祖国戦争」と呼ばれています。ロシアが第二次世界大戦の時期に自国を守った戦争として強調されたためです。なお、同じ「1812年戦争」という名称がアメリカでは米英戦争を指すため、国によって混同されることがあります。

戦争の背景

ナポレオンはロシアが大陸封鎖令を守らなかったことを理由に侵攻を決定しました。元々、ロシアはティルジットの和約に基づきフランスと講和していましたが、米英戦争へのフランスの対応や生活必需品の不足から、アレクサンドル1世は大陸封鎖令を破り、フランスへの嗜好品の輸出を禁じる決定を下しました。この敵対的な動きが、フランスの侵攻につながる要因となったのです。

侵攻の開始

侵攻は1812年6月23日に始まり、ナポレオン率いるフランスの大陸軍はポーランドよりロシアに進軍しました。初期のフランス軍は約69万人規模であり、ウジェーヌ・ド・ボアルネやジェローム・ボナパルトなどが指揮する部隊が編成されていました。対するロシア軍は当初、29万人ほどの規模で展開し、退却を繰り返す戦略を取ることで時間を稼ぎました。

スモレンスクの戦い

フランス軍はスモレンスクへ進軍しましたが、ここでもロシア軍は決戦を避け、戦力を保持し続けました。この戦術は後の焦土作戦として評価されることになり、ナポレオンは攻略できなかったことでロシア軍の戦力温存に成功することとなります。結局、フランス軍は決定的な勝利を収めることができず、さらにロシア軍は民兵を動員し、他の地域から兵力を引き抜くことに成功しました。

モスクワの制圧

9月14日、ナポレオン率いる軍はモスクワに入城しましたが、街は焼かれており、期待した物資を手に入れることができませんでした。このモスクワ大火により、フランス軍は再び厳しい状況に追い込まれます。その後の10月19日、ナポレオンは退却を決意し、困難な撤退が始まりました。

退却とその後

退却の際、フランス軍は激しい寒さと飢餓、疾病に直面し、次々と兵士が命を落としました。そして12月にはロシアからの撤退が完了し、残存兵力はわずか22000名にまで減少しました。この戦役によってフランス軍は名実ともに大打撃を受け、ナポレオンのヨーロッパ征服の野望は挫折へと向かいます。

歴史的評価

ロシア勝利はナポレオンの転落の始まりとなり、フランスの覇権の崩壊が明確になった大きな出来事でした。ロシアにとっては愛国心の象徴ともなり、後のデカブリストの乱や1917年のロシア革命へとつながる国の近代化の強い動機づけにもなったとされています。今もなお、1812年ロシア戦役は様々な形で評価され、その影響は長きにわたってロシア史に刻まれています。

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