1852年憲法

1852年憲法の概要

1852年憲法（フランス語: Constitution de 1852）は、ナポレオン3世ことシャルル・ルイ・ナポレオン・ボナパルトによって1852年1月14日に公布されました。この憲法は、同年12月25日に若干の修正が施され、フランス第二帝政の基盤を築く重要な法典となりました。

採択の背景

ナポレオン3世は1851年12月2日にクーデターを実行し、第二共和政を事実上終焉させました。クーデターの翌日、彼はフランス国民に向けて「人民への訴え」を行い、伯父のナポレオン・ボナパルトが確立した制度の復活を明言しました。この動きは、12月20日と21日に行われたプレビシットで支持を受け、92%の賛成が示されたと伝えられています。これに基づき、ナポレオン3世は新しい憲法の起草を急ぐよう側近たちに命じました。

憲法の内容と特徴

新憲法は1852年1月14日に公布され、その後の修正により1852年12月25日に最終的に確定しました。この憲法は、アンシャン・レジームや制限選挙王政を否定し、フランス革命の原則を認め、再びナポレオン帝政に立ち返ることを目指しました。特に、ナポレオン3世はこの憲法が「民主主義的帝政への回帰」を象徴すると考えていました。

権力の配分

個人統治の確立

憲法は、ナポレオン3世が大統領としての任期を10年に延ばす一方で、再選に制限を設けることはありませんでした。大統領には全執行権と立法権が与えられ、陸海軍の指揮権や条約締結権、さらには大臣の任免権や立法院の解散権まで与えられました。このように、強力な権限が大統領に集中した結果、翌年、わずかに「大統領」という呼称が「皇帝」に変更され、世襲の帝位へと移行しました。

議会の役割と限界

一方で、議会は非常に軽視されていました。立法院は260人から成り、直接選挙で選ばれますが、選挙区割りや官選候補制によって大統領（皇帝）を支持する候補者が有利となる仕組みが取られていました。立法院は法案についての修正や大臣の行為を問責する権利も持たず、政府の影響下に置かれました。

元老院は、大統領によって指名される終身議員で構成され、議会の権限は極めて弱いものでした。

政治体制の変遷

1860年代に入ると、ナポレオン3世の政策に変化が見られ、憲法は様々な勅令や元老院決議によって修正され、議会の権限が徐々に拡大していきました。1861年には立法院の議事録の公表が認められ、1867年には政府への問責権が与えられ、さらに1869年には法案提出権と法案修正権も獲得しました。これにより、議会の役割が徐々に強化されていくことになります。

結論

1852年憲法は、ナポレオン3世がフランスの政治制度へ持ち込んだ重要な変革を示すものであり、制度の変化を通じて国民の権利や議会の立場が再評価される過程を包含していました。この憲法により、フランスの政治は個人主義的で強権的な体制から、議会の参加を許容する制度への移行を見せていくこととなります。

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