1872年アメリカ合衆国大統領選挙

1872年アメリカ合衆国大統領選挙について

1872年11月5日に行われたアメリカ合衆国の大統領選挙は、第22回目の選挙です。この選挙では、現職大統領であるユリシーズ・グラントが再選を果たし、マサチューセッツ州出身のアメリカ合衆国上院議員ヘンリー・ウィルソンを副大統領候補に指名しました。選挙は共和党の内部分裂の中で行われましたが、グラントはその影響を乗り越え、容易に2期目を獲得しました。

この選挙では、共和党内の急進派が内部分裂を起こし、一部は進歩的共和党に流れる結果となりました。進歩的共和党はホレス・グリーリーを大統領候補として指名し、彼は全国党員集会で選ばれました。また、ミズーリ州知事のベンジャミン・グラッツ・ブラウンが副大統領候補に選ばれました。この新しい政党は、南北戦争の憎しみをなくし、汚職防止のための公務員改革を推進することを使命として掲げました。

一方、民主党もグリーリーとブラウンの組み合わせを支持しました。この選択は、1868年の反レコンストラクションの考え方を見直し、前進する意識を示していました。それでも、グリーリーは民主党の中で強く批判されており、彼の過去の言動が候補者としての信頼を損なっていました。その結果、2日間にわたる党員集会はわずか9時間しか続かず、歴史的に見ても非常に短いものでした。

この選挙には、ビクトリア・ウッドハルが平等権党から女性として初の大統領候補に名乗りを上げたことも特筆すべきです。彼女は有名な奴隷制度廃止論者であるフレデリック・ダグラスを副大統領候補として推しましたが、ウッドハルは憲法により就任資格がないと判断されました。彼女の選挙運動は限られた支持に留まる結果となり、得票は無視できるほど少ないものでした。

選挙運動の中で、グラント陣営は政治腐敗を告発し、進歩的共和党は公務員改革を訴えました。しかし、グリーリー側のキャンペーンは失敗に終わり、彼の選挙運動は力不足と見なされました。候補者の支持者の中からも失望の声が上がり、特にグリーリーの過去の言動がキャンペーンに大きな影を落としました。

さらに、この選挙は1870年代における女性参政権運動の最初の試みでもありました。スーザン・B・アンソニーは、投票を試みたことで逮捕されるという事件が起こり、選挙の日にはウッドハルも刑務所にいました。こうした動きは女性の権利を求める声を強め、将来的な参政権獲得の基礎となりました。

最終的に、一般投票においてグラントは56％の支持を得て、対抗馬のグリーリーに対し44％で勝利しました。選挙人投票では286票を獲得し、グリーリーは66票を得る予定でした。しかし、グリーリーは選挙人投票の前に死去し、彼に投票する予定だった選挙人は他の候補者に投票しました。結果的にこの選挙では、候補者の選定や政治のダイナミクスについて多くの教訓が得られることとなりました。

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