1889年のメジャーリーグベースボール

1889年のメジャーリーグベースボール：変革の年

1889年、メジャーリーグベースボール（MLB）は、球史における重要な転換期を迎えました。アメリカン・アソシエーションではブルックリン・ブライドグルームズ（後のロサンゼルス・ドジャース）が球団創設以来初のリーグ優勝を飾り、ナショナルリーグではニューヨーク・ジャイアンツが2年連続2度目の栄冠に輝きました。しかし、この年を特徴づける出来事は、単なるチームの勝敗だけではありません。選手たちの権利を求める動きが表面化し、新たなリーグの設立、そして野球規則の重要な改正が行われたのです。

ブルックリン・ブライドグルームズの躍進

1883年に設立されたブルックリン・ブライドグルームズは、着実に戦力を強化し、1889年にアメリカン・アソシエーションで初のリーグ優勝を達成しました。経営難の球団を買収することでチーム力を上げ、セントルイス・ブラウンズ（現カージナルス）から獲得したボブ・カラザーズと、生え抜きのアドニス・テリーという2人のエース投手の活躍が、チームを勝利に導きました。しかし、翌1890年にはプレイヤーズ・リーグ創設の混乱の中でナショナルリーグへ移籍し、異なるリーグでの連覇を達成するという異例の事態となりました。

全米選手権と世界旅行

シーズン終了後には、アメリカン・アソシエーション優勝のブルックリン・ブライドグルームズと、ナショナルリーグ優勝のニューヨーク・ジャイアンツが全米選手権で対戦し、ニューヨーク・ジャイアンツが6勝3敗で優勝を果たしました。

また、この時期には、シカゴ・ホワイトストッキングスのオーナー、アルバート・スポルディングが、野球の普及を目指して世界旅行を敢行しました。自身のチームの選手たちと、他のチームから選抜されたオールアメリカンズを率いて、ハワイ、オーストラリア、エジプト、イタリア、イギリスなど、世界各地で野球の試合を開催し、野球の世界的な普及に貢献しました。

プレーヤーズ・リーグの設立

1889年は、選手たちの権利意識が高まり、新たなリーグが誕生した年でもありました。1885年にジョン・モンゴメリー・ウォード（モンテ・ウォード）が主導して結成された選手組合は、選手の年俸制限に反発し、1889年12月16日、ついにプレーヤーズ・リーグを設立しました。このリーグは、選手組合が主導し、オーナー制を認めないという画期的なものでした。ニューヨーク、ボストン、フィラデルフィアなど8都市が加盟し、新たな野球の時代を予感させました。

規則の改正

野球規則もまた、この年に重要な改正が行われました。1879年に導入された、ボールカウントが一定数に達すると打者が自動的に一塁に出塁できるというルールは、時代とともにボールの数が減少し、ついに1889年、現在まで続く「フォアボール」の概念が確立されました。

さらに、同年9月10日には、ナショナルリーグの試合で、試合中に負傷した投手の代打として、同じ投手のミッキー・ウェルチが打席に立ちました。これがメジャーリーグ史上初の代打として記録され、選手が試合中に負傷した場合に限り代打が認められるというルール改正のきっかけとなりました。

1889年は、メジャーリーグベースボールの歴史において、チームの優勝争いだけでなく、選手たちの権利意識の高まり、新たなリーグの設立、そして規則の改正など、さまざまな出来事が重なり合った、まさに変革の年でした。この年の出来事は、その後のメジャーリーグの発展に大きな影響を与え、現代野球の礎となったと言えるでしょう。

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