1896年の映画

1896年の映画業界の動向

1896年は映画の歴史において特筆すべき年であり、様々な技術の革新や重要な出来事がありました。この年、映画の上映技術や装置の開発が進み、特にアメリカとヨーロッパでの映画産業の成長が顕著でした。

重要な出来事

1月には、アメリカ合衆国でチャールズ・フランシス・ジェンキンスとトーマス・アーマットによって映写機「ヴァイタスコープ」が設計され、エジソンとアーマットがそれを製造する準備に取り掛かりました。その後、1月14日にはバート・エイカーズが開発した映写機「キネオプティコン」がロンドンで初公開され、イギリスにおける最初の映画上映となりました。続いて、2月20日にはロバート・W・ポールの映写機「シアトログラフ」が公開され、リュミエール兄弟が彼らの作品を初めてイギリスで上映しました。

4月には、ニューヨークでヴァイタスコープが公開上映に使用され、映画の一般公開が進んでいきました。特筆すべきは、5月14日にロシア皇帝ニコライ2世の戴冠式が映画に初めて記録されたことです。これは映画が歴史的な瞬間を捉えられることを示す重要な出来事でした。

7月11日には、ベネズエラで初めての映画上映が行われ、続いて7月26日にはニューオーリンズに映画専用の「ヴァイタスコープ・ホール」が開業しました。この年、このように映画が特定の商業施設で上映される試みが広がり始めました。9月28日には映画会社パテ・フレールが創設され、映画産業における企業の重要性が増していく様子が伺えます。

10月19日には、ニューヨーク州バッファローに世界初の専用映画上映施設「エジソニア・ホール」が完成しました。このような専用施設の誕生は、映画がエンターテインメントとしての地位を確立する一因となりました。そして11月3日にはオーストラリアのメルボルンカップが映画で撮影されるなど、映画がますます多様な場面やイベントを記録するメディアとなっていきました。

映画に関する新技術

1896年は多くの映画関係者が新たな技術やフォーマットを開発した年でもありました。ウィリアム・シーリグがシカゴでシーリグ・ポリスコープ・カンバニーを設立し、ジョルジュ・ドゥメニーとレオン・ゴーモンは60mmフォーマットのフィルムを開発しました。この新しいフォーマットは、映画制作における表現力を大きく広げることになりました。さらに、カシミール・シヴァンとE・ダルファンは38mmフォーマットを導入しました。

主な映画作品

この年には多くの重要な映画作品が制作されました。

• - バート・エイカーズの『ボクシング・カンガルー』や『ドーヴァーの荒波』、
• - アリス・ギイ＝ブラシェの『Chez le barbier』などの作品が評価され、映画の多様性が称賛されました。特にウィリアム・ハイセの『M・アーウィンとJ・C・ライスの接吻』は、映画史上初めての接吻シーンを含む作品として注目されました。この作品は恋愛映画の先駆けとも言われています。

さらに、ジョルジュ・メリエスは様々な実験的作品も制作し、特に『困った夜』や『悪夢』などのファンタジー要素を持つ作品は映画の表現の幅を広げました。これにより、映画は純粋な記録媒体から芸術としての側面を持つことが認識されるようになりました。

まとめ

1896年は映画がその存在感を増し、技術革新や新しい表現が模索された年でした。これらの出来事と作品が積み重なることで、映画産業が今後どのように発展していくのか、その基盤が築かれたと言えるでしょう。

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