1904年の航空

1904年：航空技術の進化と実用化への胎動

1904年は、前年のライト兄弟による世界初の有人動力飛行成功を受けて、航空技術がさらなる進化を遂げ、実用化に向けた様々な試みが行われた画期的な年でした。

この年、ライト兄弟は彼らが開発した飛行機に関する特許を、ドイツとフランスに対して請求するという動きを見せました。これは、彼らの技術を保護し、その成果を広く認知させようとする意図があったと考えられます。彼らはまた、改良型の機体であるライト フライヤー2号の試験飛行を5月23日に開始しました。

フランスでは、航空技術の発展を促進するための大きな動きがありました。航空推進者であるエルネスト・アルシュデックとアンリ・ドゥッシュ＝ド＝ラ＝ムルトは、飛行機による1kmの周回飛行を達成した者に50,000フランの高額賞金「ドゥッシュ・アルシュデック賞」を設けると発表しました。この賞は、後の航空史において重要な役割を果たしますが、この時点ではまだ達成者はいませんでした（最終的に1908年にアンリ・ファルマンが獲得することになります）。

こうした状況の中、ライト兄弟は9月20日、ライト フライヤー2号を用いて世界初の飛行機による周回飛行を成功させました。さらに11月20日には、ウィルバー・ライトが4.4kmの長距離飛行を達成するなど、有人動力飛行の可能性を着実に広げていきました。

有人動力飛行機だけでなく、他の航空技術も進展を見せました。フランスのガブリエル・ヴォアザンは、4月3日にグライダーによる25秒間の飛行に成功しています。また、イタリアでもアルド・コラッツァが9月に、イタリアにおける最初の近代的なグライダー飛行を成功させたとされています。

この年は、航空技術が軍事においても注目され始めたことを示す出来事がありました。日露戦争が開戦した中で、日本陸軍は6月に河野長敏を隊長とする臨時軍用気球隊を編成しました。この部隊は8月3日に大連に上陸後、10月上旬にかけて、旅順攻略を目指す第3軍に配属され、偵察任務に従事しました。また、ロシア海軍も5月11日から14日にかけて、巡洋艦ロシアから気球を発進させ、偵察に用いる実験を行いました。この気球は13回の浮上に成功しましたが、海上に着水した際に破損しています。

その他の航空に関する実験としては、アメリカでトーマス・スコット・ボールドウィンが8月3日に、アメリカで初めて成功したとされる飛行船「カリフォルニア・アロー号」のデモ飛行を行いました。イギリス陸軍は6月に、サミュエル・フランクリン・コーディによる、人を乗せられる箱凧（カイト）の実験を進めました。さらに日付は不明ながら、イギリスのエドワード・パーキス・フロストは、内燃機関を動力とする羽ばたき機（オーニソプター）の実験を行い、地面を離れることに成功したとされています。

1904年は、ライト兄弟による有人動力飛行の確立が進む一方で、フランスでの周回飛行賞の設立に見られるように、欧州でも開発競争が加速しました。また、日露戦争における気球の活用など、航空技術が実際の軍事作戦に投入され始めたことも特筆すべき点です。グライダー、飛行船、特殊な飛行方式など、多様なアプローチで空を目指す試みが続けられ、未来の航空技術の基礎が築かれた、まさに航空史上の重要な一年と言えるでしょう。

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