1912年アメリカ合衆国大統領選挙

1912年アメリカ合衆国大統領選挙

1912年11月5日に実施された米国大統領選挙は、歴史的な戦いでした。この選挙では、タフト、ルーズベルト、ウィルソンという3人の主要候補が争い、中でも特筆すべきは進歩党の誕生でした。タフトが共和党の指名を受け、ルーズベルトが進歩党の候補に名乗りを上げ、ウィルソンが民主党から選出されるという異例の展開が繰り広げられました。

選挙の背景

1908年の選挙でセオドア・ルーズベルトが大統領だった時、彼は伝統に従い再選を求めず、ウィリアム・タフトを後継者として指名しました。この選択により、タフトが当選しましたが、タフトの任期中、ルーズベルトとタフトの関係は険悪化し、共和党内に保守派と進歩派という二つの派閥が生まれました。タフトは保守派であり、ルーズベルトは進歩派として様々な政策を巡って対立しました。

この内部対立の中で、進歩派は予備選挙を通じて支持を広げ、ルーズベルトが圧倒的な勝利を収めました。しかし、彼の党内での影響力は限られており、最終的には共和党全国大会でタフトが候補に選ばれました。その結果、ルーズベルトは独自に進歩党を設立し、大統領候補となりました。

各候補者の選出と戦略

一方、民主党ではウッドロウ・ウィルソンが元大統領のウィリアム・ジェニングス・ブライアンの支持を得て、激しい接戦を経て46回目の投票で候補に選ばれました。彼の副大統領にはトーマス・R・マーシャルが選ばれます。ウィルソンは、当時の政治における新しい風を吹き込み、進歩主義政策を前面に出して有権者の支持を集めました。彼は「新自由主義」を掲げ、個人の自由を重視する政策を提唱しました。

ルーズベルトは進歩党としての活発な選挙運動を展開し、タフトの指名を「盗まれた」と批判しました。彼は新たな「新民族主義」を提唱し、強い連邦政府による経済規制を訴えました。ルーズベルトの支持者たちは、その斬新さと自由主義に魅了され、選挙の重要な役割を果たしました。

一方、タフトは選挙運動が思うように進まず静かな戦いに終始しました。彼は保守派の支持を集めるために手を尽くしましたが、進歩派による攻撃に対して効果的な反撃ができませんでした。

選挙の結果と影響

当日、結果はウィルソンの勝利に終わりました。彼は全体の得票率では42%を得ましたが、選挙人票では圧倒的な勝利を収めました。この結果、ウィルソンは民主党員として1892年以降20年間の空白を経て大統領に選ばれた唯一の候補者となります。選挙中にこれまでの政治の枠組みが大きく揺らぎ、特に進歩主義が政界での重要な力を持つことが示されました。この選挙はアメリカの政治史において深い影響を与えたと考えられています。

以後、進歩党は期待された影響力を持つことはできず、徐々にその支持を失いました。しかし、この選挙は当時の政治環境への大きな変化を示すものであり、ルーズベルトとウィルソンの主張が後の政治にどのように影響するかが注目されるべきポイントとなりました。

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