1925年ドイツ大統領選挙

1925年ドイツ大統領選挙：ヒンデンブルクの当選とその後

1925年、ヴァイマル共和政下のドイツで、初代大統領フリードリヒ・エーベルトの急死を受け、大統領選挙が実施されました。この選挙は、共和政の行く末を大きく左右する重要な出来事でした。

選挙の経緯

エーベルト大統領の死後、後継者を選出するため、3月29日に第一回投票が行われました。しかし、どの候補者も過半数を獲得できず、決選投票が行われることになりました。

第一回投票では、多くの候補者が立候補しましたが、過半数を得るには至りませんでした。この結果を受け、第二回投票では、社会民主党、中央党、民主党からなる「ヴァイマル連合」は、統一候補としてヴィルヘルム・マルクスを擁立しました。マルクスは中央党に所属し、元首相として高い知名度を誇っていました。

一方、右派勢力は、ヴァイマル連合に対抗するため、既に引退していたパウル・フォン・ヒンデンブルクに白羽の矢を立てました。元参謀総長であるヒンデンブルクは国民的英雄として高い人気を有していました。当初は出馬を拒否したものの、前皇帝ヴィルヘルム2世の許可を得て、立候補を決定しました。

興味深いことに、カトリック系のバイエルン人民党は、同じカトリックの中央党を支持すると予想されていましたが、党内の保守派の圧力を受け、プロテスタントのヒンデンブルクを支持しました。また、ナチ党などの国粋主義勢力も、当初は別の候補を支持していましたが、ヒンデンブルク支持に転じました。

共産党は、ヴァイマル連合との協力関係を築かず、エルンスト・テールマンを擁立し続けました。このことは、後に「左派の票を割ってヒンデンブルクを当選させた」と批判され、社会民主党と共産党の間の亀裂を深めることになります。

第二回投票と結果

4月26日に行われた第二回投票では、ヒンデンブルクが相対多数の票を獲得し、新大統領に当選しました。マルクスは、ヒンデンブルクに次ぐ票数を獲得しましたが、勝利には至りませんでした。共産党のテールマンは、予想通り少ない票数にとどまりました。

ヒンデンブルクの当選は、ヴァイマル共和政の安定にとって大きな意味を持つ出来事でした。一方で、ヒンデンブルク自身は共和政への強い支持者ではありませんでした。彼の当選は、右派勢力の台頭を暗示するものでもありました。

選挙結果のその後

この選挙は、ドイツの政治状況を大きく変える転換点となりました。ヒンデンブルクの当選は、右派勢力の勢力拡大を象徴するものであり、後にナチス政権の成立へとつながる道を切り開くことになります。また、共産党の戦略の失敗は、左派勢力の分裂を招き、共和政の弱体化に繋がったと言えるでしょう。

この選挙を理解することは、ヴァイマル共和政の崩壊とナチス台頭の過程を理解する上で非常に重要です。様々な勢力の思惑が交錯し、複雑に絡み合ったこの選挙は、歴史の転換点として、常に注目に値する出来事です。

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