1928年のラジオ (日本)

1928年、日本のラジオ放送の飛躍

1928年は、日本のラジオ放送がその後の発展の礎を築く上で、極めて重要な一年となりました。この年、国内では放送網が大きく拡大し、技術的な進歩も見られたほか、現在につながる様々なジャンルの画期的な番組が誕生しました。

放送網の拡大とネットワーク化

1928年には、新たな放送局が相次いで開局しました。6月5日には札幌局、同16日には仙台局と熊本局、そして7月6日には広島局がそれぞれ放送を開始し、ラジオの聴取可能な地域は日本各地へと広がっていきました。

中でも特筆すべきは、同年11月5日に実現した全国7つの放送局を結ぶ中継回線網の開通です。これは、離れた場所にある複数の放送局で同じ番組を同時に放送することを可能にするもので、日本の放送におけるネットワークの始まりとなりました。これにより、特定の場所から発信された情報を全国のリスナーが同時に共有できるようになり、ラジオが情報伝達媒体としての役割をより一層強化する基盤が作られました。

技術力の向上

放送網の拡大と並行して、既存の放送設備も増強されました。5月20日には、日本放送協会（NHK）の東京局と大阪局が、それぞれ周波数を変更するとともに、送信出力を10キロワットへと大幅に増強しました。これにより、より広い範囲に、より安定したクリアな音声で放送を届けられるようになりました。また、名古屋局も4月15日に周波数を変更しています。

「日本初」が相次いだ画期的な番組群

1928年は、「日本初」となる記念碑的な番組が複数生まれた年でもあります。

スポーツ中継の開始: 1月12日、東京局が初めて大相撲の中継放送を行いました。これは、日本のラジオ放送史上初の本格的なスポーツ中継であり、聴覚だけで相撲の臨場感を伝える試みは、当時のリスナーに新鮮な驚きをもって迎えられました。
選挙報道の幕開け: 2月21日から23日にかけて実施された第16回衆議院議員総選挙では、日本放送協会が開票状況を逐次速報しました。これは日本のラジオ放送における最初の選挙報道であり、ラジオが政治や社会の動きを伝える公共メディアとしての第一歩を踏み出した出来事でした。
初の全国ネット番組: 11月には、昭和天皇の即位に関する一連の儀式である即位大礼に関連した特別番組が連日中継放送されました。特に、6日早朝に昭和天皇が京都御所へ出発される様子を伝える中継は、前月に開通したばかりの全国ネットワーク回線を活用した、日本初の全国同時放送となりました。この成功は、ネットワーク化の重要性を広く知らしめる機会ともなりました。
国民的番組の萌芽: 夏休み期間中の8月には、東京局と大阪局が試験的に『ラジオ体操』をローカル放送しました。これが大変好評だったため、11月からは東京ローカルでレギュラー番組化されました。この番組は後に全国ネット化され、長年にわたり多くの人々の健康習慣を支える国民的番組へと成長していきます。

多様化する番組ラインナップ

これらの画期的な番組の他にも、1928年には様々な分野の新しい番組が開始されました。

東京局では、国産品の奨励を目的とした「国産奨励講座」（3月）、官公庁からの情報提供である「官省公示事項」（8月）、日々の気象情報を伝える「気象通報」（11月）などが始まりました。
大阪局では、子供向けの「コドモ日曜新聞」（5月）や、公的な告知を伝える「公知宣伝」（8月）が開始されました。
* 名古屋局では、中学生向け学習番組の「中学上級講座」（12月）が始まるなど、教育分野への取り組みも見られました。

まとめ

1928年は、新たな放送局の開設による放送網の拡大、送信出力の増強といった技術的な進歩に加え、全国ネットワークの完成というインフラの整備が進みました。そして、スポーツ中継、選挙報道、即位大礼中継、ラジオ体操といった「日本初」となる画期的な番組が次々と誕生し、ラジオの可能性を大きく広げた一年でした。これらの出来事は、日本のラジオ放送が本格的なメディアとして社会に定着し、その後の発展を遂げるための確固たる基盤となったと言えるでしょう。

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